笠松の言葉が切れてから、誰も話し出さない 赤司や花宮などの知能派は何やら考え込んでいる様子だが、他の者はこの状況に呆然としたり、顔色悪く俯いている まあ、今まで誘拐かなんかだと思いたかったのに、こんな非現実的なことが度々起きたら不安にもなるよね… 花子は正直は考え倦ねていた もうすでに一度世界を跨ぎ、恐怖の波も過ぎた花子はこの状況も受け入れて、次にしなくてはいけないこともわかっている しかし、自分は部外者で、この場ではまだ疑いの視線を向けられている ここで何かを提案しても、そう簡単には受け入れてもらえないのは予想ができている ここは場が落ち着くまで黙っとくか… 花子は脳内で考えをまとめ、その場の状況を観察しようと顔をあげたが、目に入ったのはすぐ2つ左隣りにある小さくなって震える、桃色の華奢な背中だった 誰も声を発しない、皆絶望的な顔をしている 隣の今吉も何やら考え込んでいる そして、自分と一緒にここに来たはずの青峰の姿がない これ以上ない不安な状況でも、さつきは涙を流してはいなかった 手のひらを強く握り、唇が切れそうなほどにキツく口を結び、泣くまいと小さな体を震わせながら耐えていた その瞬間花子の脳内には、先ほどゾンビに襲われそうにっていた宮地の姿が浮かんだ あ、あの時の感じ… 自分は何やってるんだろう 「疑われる」とか、どうてもいい……! 私はつい今までこの状況を、どこか別のところから傍観してただけだ 心のどこかで自分は「彼らに巻き込まれた被害者」でそのうち解決してくれるであろう彼らを隠れ蓑にして、自分だけ生き残るように考えていたのだ 黒子くんたちだけでなく、さつきまでこんなに踏ん張って、頑張っている中で私は……! 彼らは確かに私にとって「画面の向こう側の人達」 でも、今は目の前で助けを求めているただの高校生だ 曲がりなりにも一番年上で大人の私が、助けてあげないでどうするんだ 花子は手のひらを強く握り、目を前に向ける 彼らの心に届くように、助けになるように… 「大丈夫ですよ」 その声に今まで思案していた者も、俯いていた者も顔を上げて花子の顔を見つめた 一斉に目を向けられた花子は優しく、柔らかく微笑んでもう一度同じ言葉を繰り返す 「大丈夫です」 「な、にが大丈夫なんスか?!この状況で、どうすればいいかもわかんないのに?!」 「うん、大丈夫だよ。これだけの人数がいるんだし、何よりまだ手掛かりも、希望もある。だから大大丈夫。」 花子の言葉に顔を赤くして、食って掛かるように黄瀬が吠える まだ黄瀬はバケモノに遭遇してないから、恐怖も不安も大きいのだろう そんな黄瀬を宥めるように、花子は穏やかに話しかける こちらを不安げに見つめるさつきも、穏やかな微笑みで見つめ返す 「希望、ってったってこの紙はわけわかんねーし、この武器だって使えたもんじゃねぇ」 「武器はあのバケモノを倒すためにないよりはマシでしょ。それに多分この紙が鍵になるなら、脱出の方法も、ここに居ない人たちへの手掛かりがつかめるかもしれない」 不安げ言葉を返す福井だが、花子の言葉にそこにいたのの顔つきが変わる 大切なチームの仲間、だもんね 「名無しのさんの言うことにも一理ある。今ここで決めてしまうには、情報が足りなすぎる。まずはある手掛かりから調べましょう」 「同感や。ここにおらん青峰や他の奴らを見つける手がかりも見つけなアカンしなぁ」 赤司や今吉の言葉に、各校の目に力が戻る この子たちは強い だけど、高校生である彼らはまだ幼い 守ってあげる、なんてだいそれた事はいえないけど、出来る限り力になろう 赤司の指示で皆立ち上がり紙をもっている人を中心に小さな輪になる 花子も立ち上がり、その輪に加わった (目に灯る希望)(そして心に決めた事) prev next 16/34 back |