別のジャンルの二次文章 | ナノ

seek unconsciously 3[鉄LB/森次早瀬]



続き。まだ続く

*******


「…っ」

蛇に睨まれた蛙のような、もう身体が強張って動けない。
吐息が掠める程に近い距離で交差したその先鋭な視線に、よもや浩一には逃れる術を模索出来なかった。


「お前は何故、此処に来たんだ?」

(なんなんだ?!この馬鹿力!)

浩一は基礎体力にはそこそこ自信があったのだ。
生身でのケンカこそ、どう足掻こうにも道明寺には敵わなかった。
そりゃマキナでの闘いのセンスだって、この森次玲二には劣るかもしれない。
越えてきた闘いの数も、人としての経験の数だって、彼に比べたらまだまだ全然足りない。そう簡単に越えることなんか出来やしないだろう。
それでも、初めて彼らに出会った頃の自分とは違うのだ。

相棒のラインバレルはああなってしまったが自分だってマキナのファクターだ。勿論ただファクターなだけだというわけじゃない。
可能な限りの体力づくりだってしているし、闘い方だって、それなりに考えて動けるようになったのだ。

(あの時とは違うんだ!、俺だって…それなりに…、っなのにっ!)

「…」

しかし現実はどうだ?
簡単に腕を摂られただけじゃない、ちょっと掴まれているだけなのに、自分はもう、その手を払う事すら出来ないでいる。

(なんなんだよ…なんなんだよ!この差はっ!!)


この意図も簡単に当て付けられたこの格差には、さすがの浩一も想像以上の敗北感を覚えた。

「痛…っ」

加減のない、圧倒的な握力。
引こうにも、締め付けられている手は全く動じる気配もない。
これではもうどうにも出来なかった。

(くそ…なんだよ…これ…)


『痛覚がないから肉体を極限まで行使できる』

いつか森次が言った言葉を思い出した。

(それにしたってっ…さぁっ?!)

「何処を見ている?」

浩一が力の差に意識を捕らわれていると、耳元で囁くような声で森次に問われた。
温かい吐息が耳を霞める。
浩一は我に返った。
ぞくりと背中に悪寒が走り、自身が置かれた状況を振り返える。
耐え難い威圧感。

「…放して…ください」
「?」
「放せよ…放せって!」

震える声を振り絞るよう、浩一は声をあげた。

「お前がちゃんと私の質問に答えたら、放そう」
「質問っ…て…」
「もう一度聞く。お前は何故此処に来たんだ?」
「それ、アンタが無理矢理…「この部屋まで私に付いて来たのはお前の方だろう?」
「それは…っ」

「それは自身の意志ではないのか?」

しばし、返答に詰まる。

(俺の…意志…?)

数秒時間をおいて、口を開いた浩一は

「……やっぱ…そうなるんですかねぇ?」

再び顔を上げると声を震わせ、枯れた苦笑いを浮かべた。

(…そんなの…認めないといけないのか?)

「“そう”とは?」

浩一は無言再び視線を落とした。
そして口を開くと小声でぼそぼそと返す。

「俺、いや…」
「…」
「早瀬浩一って人間がさぁ、心のどっかで森次玲二って人に、何かを求めてるのかもしれない、ってコト」
「まるで他人事のように言うのだな」

覗き込むよう森次が首を傾けると、浩一は露骨に逸らした。

「だって、解らないんですよっ、俺!本当に!」

口を開くともう、止まらなかった。

「これでも考えたんだ、此処に来てからだって!でも益々解らなくなって、よりによってなんで…っ」

一気に曝け出してしまったことで、浩一は半ば自棄になってきていた。
徐々に声が大きくなっていく。

「なんでアンタなんだよって…。なんで俺はっ…、俺は…っ、可笑しいでしょ?こんなの!気味悪いでしょう?」

「私はそうは思わないが?」
「っ…!?」
「以前、私はお前を必要とし、お前はそれに応えてくれたではないか?」
「あれはっ、また別の話ですよ」
「何か違うのか?」
「いやいや、だって!だって…」
「早瀬、」

掴んで扉に抑え付けた手首から滑るようにして掌を重ね、震える指に絡ませる。

「お前さっき言ったコトが本心であるのなら、私に望む事があるのなら、私はそれに応えたいと思っている」
「っ…そんなの…!」
「おかしいか?」
「おっ…おかしいですよ!…充分!」
「なぜそう思う?」
「だって“森次さん”が、俺にこんなふうに……ぁ、」

自分でも今のは失言だったと、浩一は直ぐに口を噤んだ。
呆れたような、森次はやれやれと言った様子でため息をつく。

「…お前は私を何だと思っているんだ?」
「い…いや、あの…今のナシで…じゃなくて!えっと…」

苦し紛れに切り返し、再び墓穴を掘ってしまった。
独り慌てて、浩一はパニックになっていた。

「なんで…そこまで?」
「“そこまで”とは?」
「なんでそこまで、思ってくれるんです?言ってしまえば、俺はただの平社員で、アンタはその上司でしょう?職種は特殊だけど、俺達の関係ってそんな感じでしょ?現に給料発生してるんだし…なのに…?」
「それはお前が、私にとって“特別な相手”だからだ」
「…それって“ラインバレルのファクター”ってコトですか?」
「…」

森次の眉間にシワが寄る。
その微かな変化に、浩一は気が付かなかった。

「そうではない」
「じゃあ…なん…ええと…」
「そうでもない」
「まだ何も言ってないでしょうが」
「お前が考えているコトは多分違う」

森次は浩一から視線を逸らし、眉間を抑え押さえた。

(まさか此処へきて、その特異性が仇になろうとは)

「森次さん?」

一つ咳払いをする。
わざとらしい行為だが、それで一息つけると、気持ちを切り替え森次は改めて浩一に向きなおった。

「…早瀬、」
「は…はい?」
「それは今は横に捨て置け」
「はぁぁああっ?!それってどーゆー…?」

(聞くなってコト?!)

「…それで?」
「え?」
「だいぶ逸れたが返答がまだだな、早瀬」
「あ…いや、あの森次さ「そろそろ、聞きかせてもらおうか」

ずいと前に出て、近い距離で問い詰める。
森次自身に悪意は無いが、そのどこか鋭い眼力に浩一は無意識に怯んでしまった。

「…あ、う…」
「早瀬?」
「…」

ぐっと口を噤んで黙ってしまった浩一を、その距離を保ったまま、森次はただ見つめた。

(何があった?…だと)

問いかけてやめた。
先ほど血糊を洗い流した浩一の手の甲に残っていた腫れはもう無くなっていた。
その瞬間、森次は漸く気が付いたのだ。

「ああ…そうだったな、これは愚問だ」
「え…?」
「何が有ったか…なんて、聞くまでもなかったんだ」
「…森次さ「早瀬」
「…はっはい?」

いつの間にか解かれていた手で、その肩を軽く叩く

「来い、今度こそお茶を出してやろう」





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直す度に文章が無駄に長くなる

森次さんがさっさと早瀬に手を出しゃあこんなに長くはならないのだ
(そんなもりじさんはいやですな)

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