ちょっとだけ
ただいま、
ああ、
帰って来て間もなく、荷物をソファーに下ろし、ルージュは本棚の前のブルーにパタパタと歩み寄った。そして彼にしてはちょっと大胆に、その背中に後から抱きついた。
辞典のような分厚い本を掴み、引いたところで、ブルーの手が止まる。
「…ルージュ?」
「今日は…その、寒かったから…。なんて…ははは」
ぎこちない口調と、ほんのり溢れた苦笑い。
そこに違和感を覚え、ブルーは掴んでいた本をそのまま指で押し戻した。
「そう…だな」
何気なく頷く。
「ブルー…」
「ん?」
ルージュは目の前のブルーの背中に、額を押しつけるようにして寄りかかった。
鳩尾辺りに組まれたの手と手を、ブルーは暫し眺めてから、それを覆うように自分のを重ねる。
「ちょっとだけでいいから、このままで居てくれる?」
「ちょっと…というのは…」
「ちょっとだけだよ」
「…ちょ「ちょっとだけ、だから」
その手をほどこうとすれば、キュッと力が入った。
「ルージュ」
「…も……少し…」
精一杯の思いで抱きつく。
「我慢しなくていい」
「っ…!」
ルージュはハッと顔を上げた。
ブルーはこちらを振り返りはしなかったが、
「いいんだ、ルージュ」
再びそう言って、頷いてみせた。
「ブルー……」
「…」
しばし間を置いてから、ぐす…っと弱々しく鼻を啜る。
「ぅ…、んっ…」
抑えこもうとしていた感情が、一気に溢れだす。
小さくなってしまった肩が震えだした。
ブルーは上乗せしていた手を、今度はしっかりと包み込むようにして握りしめる。
「ー…っ」
一つ雫と共に、ルージュは殺すような声で泣き出した。
End
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一人出かけた先でちょっと悲しい事があって、人肌恋しくなかったルージュと、何となく察して宥めるブルーでした。宥められて最終的に泣き出しちゃったー!わー!みたいな。
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