ぶるさんとるじゅさんと | ナノ


動き出した刻(時の君×ルージュ)


こつ、こつ…
響く時計の音と共に、階段を降りてゆく。
いつの間にかの大所帯に、また一人。

時の君はふいと立ち止まり、天を仰いで振り返る。その先に淡い銀の長い髪の、紅の衣を纏う青年を捉えた。

ルージュ。

すこし距離を置き、引きずるような足取りで階段を降る。うつ向きがちに傾く表情は何処と無く虚ろげでまた重い。
仲間の一人に、すれ違い様背後から軽く背中を叩かれ、酷く驚いてはその反応が面白いとからかわれ、赤くなった。戸惑いながら髪を掻きあげた瞬間、こちらに視線が流れ込んで、そしてばっちり目が合った。

「…」
「…っ」

間もないうちに、ルージュからぎこちない様子で視線を逸らした。それはちょっと露骨で、らしくない態度だったかもしれない。分かっていても、ルージュは突如置かれたこの状況に戸惑う思いを隠せず、ただ困惑した。
同時に嫌悪に近い衝動が強い現れる。
こんな感情を他人に抱いたのは始めてかもしれない。
ルージュは一つため息を落とし悩む。もう平静を装う心の余裕すらも無くなっていた。
周りがみても“自分らしくない”態度。
彼が悪い訳じゃない。
自分が精神的に幼いせいなのだから、だから分かってる。
分かっている、のだけれど?

「……」

まさか。まさかこんな事になるなんて?

予想外?誤算?いや…想定外。
そのこの世に二つとない力…時術を、その命共々奪わなければならない相手である時の君。
まさか一つの目的も為に行動を共にする事になるなんて…?

「おい」

踏み止まり、ルージュは少し間を置いて顔をあげた。

「もう良いのか…?身体は」

問いかけの意味が解ら無かった。

「なんの…話でしょうか?」

「“砂の器”の交換条件に、自分の命を一部差し出したそうじゃないか?」

ああ、と納得した。

「問題ありません」
「そうは見えないな」

いつの間にか来ていたのか、その腕に背後からがっちりと腕を掴まれた。そしてそのまま少し強引に引き寄せられる。

「顔色が良くないな、それに」
「…!」
「少々、人間にしては熱が高いようだ」
「さっ触らっ、ないで…っ」

ルージュは反射的にその手を払って身を引いた。
ぱしり、と弾く音が響く。

「嫌われてしまったようだな」と、払われた手を軽く撫でる。しかし口で云う程、堪えてはいない様子で、時の君は笑った。

「…僕は、他の皆とは事情が違うんです」
「そうか」
「だから…あの人に付き合う中で、結果貴方と行動を共にする事になってしまったけれど、だからといって貴方と馴れ合う訳にはいかないんです」
「そうか。そうだな」

全て終わったら、僕は自分の目的の為に貴方を殺さなければならないから

…言えなかった。

「だから僕に…構わないでくださ「そういえば…名を、」
「?」

「名前はなんと言ったか?」

次の瞬間、時の君はなんの脈絡もなく問いかえした。
腕を組んで考え込むような、そんな姿勢をとった。

「…はい?」

ルージュは自分の耳を疑った。

「名前。さっき他の者に聞いた気がするんだが、…忘れてしまったんだ。すまないな」
「…僕の話、聞いてましたか?」

会話の流れをさりげなく切り替えられ、ルージュは戸惑った。
時の君は「ああ」とはっきり、頷いてみせた。

「馴れ合う気がないのだろう?私と」
「…そうです」
「…で?名前は?」
「だ…だから…っ!」
「名前を知り合う相手とは争えないか?マジックキングダムの術士よ」

清逸だな、と足して笑う。

「…!」

ハッと目を丸くする。

「しかしそんななりで片割れと戦えるのか?」
「何、を…」
「違ったか?」
「どうして…それを…」
「時術を欲する者は五万と見てきた。その殆どがその法衣に似た姿の者だった」
「…あ…」
「しかしどれも一国の大義を背負った者とは思えない程に弱かった…」
「僕が何者なのかも、その目的も判っているのに名前なんて、そんなもの聞いてどうするんです?」
「礼を」
「礼…?」
「云いたかったんだが、いけないか?」

…そんなもの、

「僕は、貴方の為に貴方の時間を呼び起こした訳じゃない」
「だが私はそのおかげで、実に興味深いものに多々出逢えた。感謝している」
「…めて…」
「下界を渡り歩く楽しみも増えた」
「…やめて下さい」

ルージュは耳を手の甲で覆い、首を振る。そして耐え兼ねてか声を上げた。
時の君は腕を伸ばし、ルージュの肩に零れる癖のかかった淡く細い銀色の髪を掬った。

「そんなつもりもないし、第一僕は…「紅の術士」

触れられた瞬間、びくりとルージュの肩が震えた。

「…っ」

目の前で目が合い、ルージュは動けなくなってしまった。
髪を触れられただけだ。何かをされたわけじゃない。
なのに…
縛るものなど何もないのに、身体が言うことを聞いてくれなかった。


「特にお前は、興味深い」
「…な…」
「非常、に」

いますぐ逃れたいのに!

「な…ぜ…」
「それは、お前が…」

そのまま、ゆっくりと顔を寄せてくる。
じわじわと縮まる距離。
ルージュは息を呑んだ。
嫌、だ。これ以上は関わりたくない
それなのに…

こんなに近くに来「ルージュ!」

先のほうから聞きなれた仲間の声がした。

目の前、唇と唇が触れそうな距離まで時の君が迫ってきた処で、ルージュはハッと我に返った。

「…あ…」

今、彼は、何をしようとした?

興味とはどういう意味だ?
時の君が何をしようとしたか、考えているのか、全く理解出来なかった。
同時に恐怖に似た感情を覚えた。
解らない。

「い…や…」

そして愕然する。

「?」

もっと理解出来なかったのは自分の方だ。
なぜ、僕は動けなかった?
動かなかった?

「…」

何もかも、解らないと思った瞬間、頭の中が真っ白になった。思考が停止してしまい、パニックに似た感覚が溢れ出し、ルージュは堪らずその胸を突き飛ばして下がった。

「…っ」

無言。
ルージュは逃げ出した。
くるり背を向けた一瞬に揺れた髪の向こうに見えたルージュは頬を染め、悲しげにそして酷く泣きそうに瞳を潤ませていた。





*****
0・ブルーとルージュはマジックキングダムでは唯一、人工的に分離処理を受けていない自然に産まれた双子と妄想

1・ルージュは誰か(ヒューマン系主人公)のパーティに所属。
ルージュを連れている主人公が時の君をメンバーに追加。(ここ基本)

2・時の君は多分マジキンの人工的に分離処理を受けた双子の片割れとはいやというほど数の戦っていると妄想。またそれが時間を止めてまでの引きこもりの要因の一つと推測

3・時の君くらいの術士なら、人工双子も本当の双子見分けくらいできるんじゃないかと、むしろマジキンが抱えている事情そのものも知ってるんじゃないかと予測してみる。

以上を踏まえた上で、人工的な双子でないナチュラルな双子の術士の片割れの登場に、興味を示した時の君×まさかの事態に若干不安定になっているルージュ。でした(長い長い)

※1 を抜いた同じ条件なら、時の君はブルーにも同じ様に興味を抱くだろうけど、ブルーは口振りからして殺す気満々で、隙も無さげなんで物語にならなそう…イメージですが。


※おかしい所を発見したら修正かけるかも知れません。すみません文才も集中力もないので…。
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