ぶるさんとるじゅさんと | ナノ





 触れたばかり、相手の体温の感覚が残る唇を手の甲で拭う。

「兄弟でこんなことするのって、変?」

 背後から首に絡み付いていたルージュの白く細い腕をほどいて、ブルーは振り返った。

「不毛…だな」

 近い距離で目が合う。
 何故だろう逸らせなくて、暫しそのままで時を刻む。

「うん」

 僕もそう思う、ルージュは微かに微笑んで頷いた。

 解っているならなぜ?

「でもおかしいのは…今に始まったことじゃないもの」

 疑問は口より先、答えが出てきた。
 
 近い距離。ルージュの吐息がブルーの顔を掠めた。
 少し熱の隠った、どこか甘い吐息。

「生まれたときから宿命付けられた双子の兄弟、互いが自分が認められる事の為だけに、たった一人の肉親である兄弟同士で殺し合いまでした…」

「…それ以上の狂気はないと?」

「僕達の関係は生まれたときから既におかしかったでしょう?」

 ルージュは再び精一杯で腕を伸ばした。
 それは彼にとって、とてつもなく勇気の要る行為。緊張し過ぎて指先が小さく震える。
 掬いあげる様にして、触れたブルーの頬を、顔を、ゆっくり己のほうに引き寄せた。
 見えない何かに震える指先。それを直に感じ、半ば呆れた様子でブルーは見据えた。
 何をしているんだこいつは…思う反面、だが何故か払うことが出来なかった。
 ブルーは二度目のキスを受け入れた。
 柔らかい唇は触れたと同時に離れた。
 ルージュは少し慌てた様にして視線を落とした。

「ねぇ」
「なんだ?」
「抵抗…しないの?」

 まもなく、顔色を伺うよう、チラリとブルーを見上げる。

「…?」

「僕とこういう事するのは、不毛なんでしょう?」

 どうして?

「それはお前もそう思っているんじゃなかったのか?」

「…そう…だけど…」
「ルージュ」
「な…に?」
「誘っている、つもり…なのか?」

 その問いかけは、冗談のつもりだった。

「結構…難しい、ね」

 頷く代わりに少し照れ笑い。

「……」

 呆気に取られたような、そんな顔をする。
 加えて不自然な咳払いを一つ。

 …ブルーが驚いた?

 ルージュは思いもしなかったそんなブルーの反応に、声を殺して震える様にして笑った。
 笑ってしまった。

「笑うな」
「…っごめんなさい」

 悪気はないんだよ、とルージュは慌てて平謝りを繰り返した。

「お前が下らん事ばかり云うからだ」

 再び咳払い。

「…う…ん









…ぁぁぁぁああ!」

 途端ルージュが声を上げ、慌ててブルーから退いた。

「なんだ今度は」

 流石のブルーもこれには驚いていた。

「…ん、なんって、いうか…は…恥ずかしくなってきちゃて…あはっ…あはは…」

 じわじわと自分が晒した行動を振り返って、酷く後悔をしている様だった。
 ブルーにくるり背を向けてその場に座り込む。ルージュは耳まで真っ赤にして、熱る頬を手の平で抑えた。
 小刻みに肩を振るわせながら、「静まれ鎮まれ」と、懸命に小さな声で繰り返す。

「ガラにも無いことをするからだろう」
「はい!ええ、もう、お…おっしゃる通り、で…っ!」

 はっきり言われ、返す言葉が無かった。
 ごもっともと頷き、やがてルージュはしゅんと悄気てしまう。
 単純なやつだとか、脆すぎるとか…兄弟故かついつい自分と比べてしまう。
 どうしようもなく情けない奴と思いながらも、だが…それを見ていて、今度はブルーが小さく吹き出して笑った。
 何故か自然と笑いが込み上げて来たのだ。
 自分でも不思議だった。

「全く」

 間もなくブルーが膝を折り、ルージュの目の前にしゃがんだ。

「本当にお前というヤツは…」

 顔だけ振り返ったルージュと再び目を合わせる。と、もう留まる事は出来なかった。

「ブルー…?」

 ブルーは背後から、ルージュの腰の辺りに腕を回し、帯をするりと外した。

 カラン、

 軽く弾ける音を立て、帯に備えつけられていた短刀が、床に転がった。
 しかしブルーは構わず、弛くなったルージュのズボンから手を滑らせる。
 冷たくて細いブルーの指がルージュの肌を這いまさぐった。

「っ…」

 身震いと共に、ルージュの身体は無意識に退けた。

「滅多な事はするもんじゃないな、ルージュ」
「…え…え?」
「知らんぞ、私は」
「な、に…?」
「…どうなっても」

 しかし背後に回されたブルーの腕は一見の体型から想像出来ぬ程に強い力でルージュを捉えた。
 それが答えだと思えた。
 自然に目尻が熱くなって涙が溢れる。

「…う、ん」

 三度目はブルーの方からキスをした。




***
ルージュの誘い受
紅青紅でした。

彼らは互いが変なところで不器用ならいいなぁと。
あからさまに対決後な雰囲気を醸し出しているのにも関わらず、二人して身体が個々に存在しているのは何故か、という話ですが…
…片方が片方を命術で蘇生した、とかどうですか良いですか駄目ですか。

むしろそんなのどうだって良いですか…(笑)


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