せんゆ | ナノ

トイフェルとクレア[前]


トイフェル「クレアさんまじ〇〇〇!」
って感じの文章が読みたい

トイクレ増えて支援
見計画で打ち込んでます以下略
パッと見クレトイに見えなくもないです。あまり長いので二つに別けました。

で、その1(前編)
その2(後編)はもう少し掛かりそうです。


****




“初代魔王ルキメデス”の身体の中にあった二つの魂
一つはルキメデスの魂
もう一つは、そのルキメデスに乗っ取られてしまった器の本来の人間の魂

触れたあの瞬間直ぐに理解した。
器の人間の魂は触れた瞬間とても温かくて、澄んだ魂だった。
穢れを知らない子どものような、透明で
どこまでも清らかでいて…まるで…




「あ、たましーの魔法使いの人じゃない?」

(正直、再び顔を合わせる事になるとは思わなかった)

トイフェルとクレア。
物語に描いたような、城の廊下で二人はばったりと出会った。
指差し、魂の部分で詰まり、言いにくそうに呼び掛けた後に、クレアは人懐こく微笑んで近づいて来る。

「…!」


声を聞くや否やの条件反射、トイフェルは身を強張らせて、気持ち退いた。

「名前は…えーと確か、トイ…トイ…トイプー…んああっ惜しい!出かかってるのに!」

(惜し…くない、全然違う)

トイフェルはぎこちない動きで首を左右に動かした。

「トイなんとかさん」

(なんとかさんで誤魔化された!?)

「あはは、お久しぶり!」

(…この人はたしか…




……?)


しばし考えて、
誰だっけ?
とか。

(誰だっけ…?)

残念ながら、名前を覚えられていないのはお互い様だったようだ。

「俺の事覚えてる?クレアだよ、クレア。アンタさ、俺の身体からシーたんのパパさんの魂引っこ抜いただろー?」

クレアは改めて「宜しくなー」と名乗り、微笑んだ。
そしてその途端に、それはそれはマシンガンのように語り出す。
あのときはありがとうー。などと付け足してから、

「あ、シーたんってのはねー、シオンでロスでクレアシオンだよー。知ってるでしょー?因みにねー、シーたんのパパさんってのはねー、シーたんのパパさんで魔王ルキメデスだねー」

(シーなに????)

早口で胆略的な説明は残念ながらトイフェルには伝わってはいなかった。

(あれ?伝わってない?)

互いに沈黙を置いてから、あまり細かい事を気にしないクレアから再び口を開いた。
(簡潔に説明したつもりだったけど…まぁ…いっか)

「そんでさーそんでねー、トイなんとかさん。アルバ君がいる地下室って何処だっけ?お城って広くて、俺迷子になっちゃったみたいでさー?」

トイフェルの反応を待つ前に口を開いた。
参ったね〜困ったね〜等とぼやきながら、はははと笑う。
迷子というのはおそらくは本当なのだろうが、トイフェルにはクレアが口で言うほど困った様子には見えなかった。


「知ってる人に会えて良かったよ〜。さっきもなんか不審者みたいな目で見られたし」

知ってる人…クレアはそう言うが、トイフェルにとっては彼はほぼ初対面同然である。
病的に人見知りをするコミュ障であるトイフェルには、言葉を理解することは出来ても、瞬発的にそれに似合った言葉を返す事が出来ない。

(ああ、覚えてますよ。ちゃんと)

トイフェルは吹き出る汗と戦いながら、それでも強張って動けないでいる唇をなんとか開いた。

「でゅ…、、、…ふっ」

今にも舌を噛みそうな勢いで、そう言葉を吐き出したものの、基本的な挨拶のその一文字すら言えないまま、最終的にはやはり舌を噛んだ。

「ん?」

彼が重度のコミュ障であることを知らないクレアは、ただ不思議気に首を傾げた。
もしかしたらクレアは、コミュ障という意味すら知らないのかもしれないが

「ふっ…っっ」
「なんか苦しそうだけど大丈夫?」

ブンブンと頭を縦に振るい、頷いて見せると、トイフェルはクレアに背を向けて視線を反らした。

「そう?」

(…は見えないけどなぁ?)

向けられた背中を、クレアはなんとなくで手で触れた。

「ぎぃああああ!」

ぴとりとクレアの掌がその縮こまる背中に触れた瞬間、トイフェルはえもいわれぬ声をあげる。

「わわっ!?」

背筋を張らせて向き直り、そこから二歩三歩、後ろに下がった。
そして壁にドンとぶつかり、痛い思いをした。
足は震え出し、半泣きで耳まで赤くなる。もう精神的も極限まで来てきていた。

「ご…ごめん!驚かせるつもりじゃなかったんだけど…」

「っ…」

再び左右に首を振った。
落ち着け俺、落ち着け俺、
トイフェルは懐を押さえて何度も自身に言い聞かせた。

「…ひ…ひさっ…」
「うん?」
「ひ…さ…しぶ……ぶり…っ…れす…」
「!」

「…?」
「うん、久しぶり!」
「…」

やっと返ってきた挨拶に、花が咲いたような笑顔でクレアは再び返した。

(だめだ…もうむり…)

トイフェルは力尽きたのか、壁に寄りかかったままズルズルと崩れると、そのまま気を失ってしまった。

「わあああっ…!トイなんとかさーん!」



****

続きます
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -