前夜[トイフェルとアレス]
トイフェルとアレス
トイアレに出来なかったけど気持ちそのつもり。
時間的には一章
アレスがヒメちゃんと旅にでる前くらい。
前夜ってタイトルですが夜じゃないです。
前夜祭てきなニュアンスででも祭じゃないのでみたいな。
執事長が後半嫌な意味で恥ずかしいことになってます
色んな意味で無理って思った方や苦手さんはスクロールしないでそのまま逃げて下さい
例によってあまり真面目に打ち込んでません
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外は雨が降っている。
雨が珍しい季節ではないが、そのせいで城内も若干ながら気温がさがっていた。
(寒い…今日はもう寝るかな…)
トイフェルは悪寒を感じ身震いをした。
気圧が低いせいで肩がより一層重いとか
ただ単に気だるいとか
窓の向こう空を仰いで、怠惰な事ばかり考える。
(…そうしよう…)
ひとつため息をついて、今来たばかりの道を振り返り、戻ろうとする。
「おらそこ!どけどけぇー!」
邪魔だ邪魔だと、遠くから罵声が聞こえた。
何事か、トイフェルが振り返った瞬間、すぐ目の前に膝があった。間髪入れず、“それ”がトイフェルの顔面を直撃したことは言うまでもない。
「ぐあっ…!」
鈍く嫌な音を聞いた、と同時にトイフェルは床に派手に転げて倒れ込んだ。
こんな暴挙を働く者はこの城にはトイフェルが知っている限りでは一人しかいない。
メイド長・アレス。その人である。
何をそんなに急いでるのかは解らないが、薄手のキャミソールにハーフパンツ…と、とてもラフな姿で、工具セットを片手にどかどかと廊下を疾走し、不運にも鉢合わせてしまったトイフェルを問答無用に轢き倒し、全く動じる事なく走っていった。
「ん?」
トイフェルを轢いてから、少し先を行ったところで、ようやくアレスは立ち止まり振り返った。
「…オイコラちょっと待て」
ヒクヒクと身体を小刻みに震わせながら、トイフェルは身体を起こそうとして…かなわなかった。
ぐったり床に突っ伏してしまう。
「なにやってんだー?お前、そんな所で寝ると風邪引くぜー?」
とてもメイドには思えない、仮にもそれらをまとめる地位に立つ者とは思えない口振りで、平然とトイフェルに問いかけた。
トイフェルに起きた参事に、まるで他人事の様な素振りで問いかける。
「それはこっちのセリフです」
鼻を押さえ、再びトイフェル身体を起こそうと力を入れた。
身体の節々が悲鳴をあげている。
(痛ぇ…)
時間をかけてようやく立ち上がった。
地味に鼻から血が流れていた。
「は?」
「なんなんです?その格好」
鼻血を適当に拭いながら、アレスに問いかけた。
「ん?動きやすいぞ」
工具を持ち直しつつ、アレスはモデルのようなセクシー風の、それっぽいポージングを決める。
しかし工具を抱えるその手には軍手をがっちり嵌められていて、足元は作業用のゴツいブーツを着用していた為、色気などあったものではなかった。
所々を隠せばそれなりには見えるかもしれないが
いやいや、
「そんな事は聞いていない」
「なんだよ、メンドクセーな」
チッと舌打ちをかわして、アレスは露骨にうんざりといった顔で返した。
「もう少し露出を控えたらどうです?仮にも貴女、メイド長でしょうが」
「またそれか、良いだろー別に?すくなくともお前よりは働いてるし」
「そういう問題じゃなく…」
「あぁーそーか、だからお前鼻血だしてんのか。エロいこと想像したんだなー?」
「…は?」
「ただの朴念仁だと思ってたけど、ちゃんとそう言う感性持ち合わせてたんだ?」
(ぼくねん…なに…???)
「あっはっはっ!冗談だよ冗談」
茫然と固まってしまったトイフェルの顔をみて、アレスは吹き出して笑った。
おま…そんなマジな顔すんなよ、と何がそこまでツボってしまったのか、アレスは涙ながらにケラケラ笑った。
(うああ…コイツめんどくさい)
柄にもなく他人の心配なんかして、全く何をやってるんだ俺は…、トイフェルは思いながら再びため息を付いた。
「こんな寒い日にそんな姿でうろついたら風邪を引く」
「…はぁ?」
「そしたらヒメさんの面倒がこっちに回ってくるでしょうが」
「それがなんだってんだよ」
「はっきり言って迷惑です」
「お前なぁ何が迷惑だ、働けよ執事長」
「特別給もなく貴女の代わりなんて死んでも御免です」
「ああ、そうかよ」
「ええ、そうです」
「…」
「…」
お互い無言でにらみう合う。
はー、とため息をついて、アレスは工具を再度持ち直した。
「まぁいいわ…どのみちあたし風邪なんぞ引かねーしなぁ」
「ですね。なんとかは風邪引かないっていいますし。余計なお世話でしたね」
嫌みを言ったつもりだった。
「…」
この流れなら、流石のアレスも殴りかかってくるかもしれない。だがそれでこの会話が終了するなら一発くらいくれてやってもいい。トイフェルは思った。
痛いのは嫌だか、こんな不毛な会話をこれ以上続けるほうが億劫だった。
面倒な事はもっと嫌いだ。
「…そうじゃない」
しばしにらみ合ったのち、アレスはくるり背を向けた。
「?」
「あたしにはやることがある。ヒメちゃんのためにも簡単に倒れるつもりはないんだ」
急に態度が変わったアレスは、そう言うと、間もなく歩き出した。
「じゃーな、朴念仁」
「…?」
背中を向けるとそれ以上は振り返ることなく、軽く手を振って去ろうとした。
「…アレスさん」
トイフェルは無言、その背中を眺めたのちに、アレスさんと呼び止めた。
「なんだよ」
低いトーン。
「裏でコソコソ何やってんのか知りませんけど、そう思うならもう少し自分を大事にしたらどうです?」
「…?」
「貴女ここしばらくまともに休んでないでしょう?それで“ヒメさんのためにも〜”なんて、よくそんな恥ずかしい台詞が吐けますね」
アレスは眉間にシワを寄せて振り返った。
「なんだよ急に」
「体調不良なめるなよ」
「はぁ?」
トイフェルは煽るような口調で返した。
「貴女が独り、何と戦ってるのかは知らないし、興味も有りませんけど。守るものがあるなら尚更です。自分を守れない奴がどうやって他人を守れるって、言うんです?」
「…!」
アレスは言われるまま、呆然とした。
「そもそも今時、自己犠牲なんて流行らないんですよ」
トイフェルはそう言うと自身の上着を脱いで、ズカズカとアレスの元に歩み寄ると、脱いだそれをアレスに押し付けた。
「お…おい…!」
アレスは言葉を失い、声こそ掛けたものの、トイフェルを呼び止める事が出来なかった。
トイフェルは無言、アレスとは逆の方向に向かって歩きだす。
アレスは押し付けられた上着を手に、ただ立ち尽くし背中を見ていた。
「なんだ…あいつ…」
気持ちのしのしと踏み締めるように歩き、廊下の突き当たりを曲がった瞬間、トイフェルはピタリ留まった。
「…ぅ」
小さく呻いたかと思うと、次の瞬間、無言走り出した。
耳まで紅く染めて、口元を抑えて全速力で廊下を駆け抜けて行く。
なにをやっているんだ俺は!
とんでもないことをしてしまった。
恥ずかしくて羞恥心に殺されそうだ。
いやむしろ殺してくれ数分前の俺!
「…!!」
偉そうにペラペラと語っていた数分前の自分が妬ましい。
何言ってんだ俺、
何言ってんだ俺、
何言っちゃってんだ!!!
「うああああ!!」
トイフェルは自室にたどり着くと、バンと扉を開いて逃げ込む様に入り込み、勢いよく扉を閉めた。
扉を背にずるずると座り込んでは、膝を下り抱え込むようにして体育座りでブルブルと体を震わせた。
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ヒメチャン(ロボ)に入ったヒメちゃんとアレスが旅立つ前日くらいの話。
アレスさんて多分
ツン9.75:0.25 デレ
くらいだと思っています
彼女はヒメちゃんを一番大事に思っているのです
多分トイフェルは二の次三の次くらい
しかしトイフェルとアレスさんはお互い無意識に自覚ないまま惹かれていると良い。
どっちが先に気がついても良い感じです(あくまでも個人的な話です)
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