DREAM | ナノ





かつん。無機質な固い音が落ちてきた。ふわふわと漂っていた意識はいっそ面白い程素早く戻ってくる。頭の重みを支えきれずに持ち上げかけた手と共に柔らかな毛布へと再びダイブした。閉じたままの目蓋に光が翳され、瞳の裏に赤と白を齎す。薄く開けた視線の先に己の投げ出された腕ときらり、と光る小さなガラス玉が映った。ごぅ、と枕に押し付けられた片耳の奥では獣が吼える。確か血の流れる音だっただろうか。どうやら心臓は休んでいる暇などないようだ。仮に休めばこの体はすぐにでも冷たくなってゆくのだ。白と黒の球を蹴り上げるこの足も、刹那の内に腐り落ちてこの地から消え失せる。ただそこには黒しかない。存在すべき色とそうでない色が溢れるこの世界で己はどちらに属しているのだろうか。黒いだけの自分の周りには今や様々な色が溢れかえっていた。何色にも染まらずに生きていくとした自分はふとした瞬間に混じり合ってしまいそうになる。その場に止まり、立ち尽くした己の夜はいつの間にやら朝を迎えていたのである。ばく、ばく、と脈打つものは同じだ。それを辿って歩いてきた彼等には正しく本能が備わっているのだろう。かつん。




夜を迷走する


BGM:カルマ

自分の中の不動明王のイメージ