DREAM | ナノ





私が物心がついた頃には既に彼はひとりでいた。庭先でぼんやり、空を見上げていると思えば、突如として駆け出して、屋根瓦の上に登ってしまっているのだから、側付きの者は困り果ててしまうのだ。その瞳が何を捉えているのか私にはこれっぽっちも判らなかったが、兎に角彼はひとり、だった。


「三成様、」


月に煌めく短い御髪をただひたすら見つめるのが私は好きだった。夜が一番お美しいかのお人は今日とて屋根へと登っておられる。私なぞには到底理解の及ばぬ場所にいらっしゃるのだろう。広いこの空へ何を思っていらっしゃるのだろうか。たなびく雲間に見え隠れする淡い月が全てを奪うかのように闇を照らしてはまた消える。何の用だとひしひし、殺気が辺りには飛び交っている中顔色一つ変えずに突っ立っている私はもう虫螻同然である。首元を薙いで脳髄をかき混ぜて脚をもいで全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部そう、全てを欲して叫ぶので御座います。貴方様の下へと乞うので御座います。



星屑の葬列



title by「亡霊」