DREAM | ナノ





『あ、いた、政宗くん。』


外でもよく映える透き通った声が耳を掠めた。ふわり、と柔らかい笑みを浮かべて、小走りに近付いてくる。ああ。そう軽く相槌をうつが、内心はバクバク、だ。何も不備はないだろうか。金も持ったし、服にだって精一杯気をつけたはず。


「行くか。」

うん、と小さく頷いた彼女のこれまた小さな、手。遠慮がちに少しだけふわり、と握った。辺りは鮮やかに彩られたクリスマスツリーや立ち並ぶビルの灯り、行き交うカップルでざわめいている。いつも話していたのは、何だったか。それすらも思い出せない程に、緊張、していた。無意識に彼女の手を握り込んでいたのか、不思議そうに彼女がこちらの顔を覗き込んでいた。ダメだ。自然に、自然に、を意識すればするほど緊張が増している気がしてならない。コートの胸の上、内ポケットの中の小さい箱にそっ、と触れる。


(、cool down.)


今日は、コレを渡すために計画を立てたんじゃないか。しっかりしろ、俺。そう自分に言って聞かせて彼女を振り返った。不意に人混みの喧騒の中、彼女は立ち止まり、その両手で俺の右手を包むようにして。


『具合悪いの?無理、してない?』


酷く心配そうにこちらの眼をじっ、と見やる。あぁ、心配、させてしまった。情けねぇ。自嘲気味に薄く笑い、ふる、と首を振った。


「そうじゃねぇ。ただ、」

緊張、しちまってよ。そう言えば、彼女は、緊張?と、よくわからないと云った顔つきになる。あぁ、と一つ肯定を返し、自分の右手を未だ包んでいる彼女の手に、今し方内ポケットから取り出した箱を持たせた。


「propose、だ。受けてくれるか、my sweet honey?」


暫くぱち、ぱち、と瞳を瞬かせていた彼女が、寒さではない赤さで火照らせた顔のまま、ふわ、と微笑んだ時には、往来であることも忘れ、愛しい身体を腕に閉じ込めたのだ。





初めましての




(何時でもこれからも、)
(よろしくね。)