DREAM | ナノ





ふあ、り。ふあ、り。


空を仰げは、白く視界はいっぱいに占められる。高層ビルが立ち並び、様々な車が行き交う大通り。寒そうに葉を落とした歩道に立つ木も、今日ばかりはイルミネーションで洒落た着こなしをしていた。はふ、と息を吐けば、降ってくる雪を隠すように白く染まった吐息が広がっては、霧散する。


丁度帰宅ラッシュ時なのか、辺りはどこもかしこも人で埋め尽くされている。その人混みの中をたっ、たっ、と足音が駆けていた。


(うぅ、遅くなった。)


待ち合わせ時間は疾うに過ぎている。何故こんな日まで残業があるのか。特別手当てを請求したい。


(まだ、いるかなぁ。)



はっ、は、と少しだけ乱れた息で、人と人の間を縫うように駆け抜ける。怒ってはいないだろうか。一応携帯で連絡はしておいた。けれど。


(、だめだな、ぁ。)


こんな大切な日に待たせるなんて。沈んだ気持ちを抱えながら、一つの豪華な佇まいの店へと飛び込んだ。


「いらっしゃいませ。」


『あ、えと、前田、で予約しておいたんですが…。』


如何にも品の良さそうなボーイが迎えるこの店の雰囲気は、とてもじゃないが、緊張するのを隠せない。しどろもどろに言葉が口をついて出た。


「あちらでお待ちかねです。」


す、と示された方へと視線を巡らせれば、



『、慶次。』


良かった。まだいてくれた。見慣れた高い位置で結われた髪を目にして、ほっ、と安堵の息をついたのも束の間。すぐに怒ってやしないだろうか、と不安に刈られる。たったそこまでの距離が、先ほどまで走ってきた距離よりも長く、遠く思えて仕方なかった。まともに見ることができずに俯き加減で呼び掛けようと、口を開いた。と、


「良かった!」


上げられた声に顔を上向ける。そこに在ったのは何時もの笑顔。にぱっ、と太陽のような綻びを見せる明るい、笑顔。外は凍てつく寒さでも、暖かい、私が好きになった笑顔だった。


『、あの、遅れて』


「あぁ、こんなに冷たい!女の子は体冷やしちゃダメだろ?」



きゅ、と大きな両手で手を包まれる。あったかい。そう漏らせば、だろ?とどこか得意気な彼の言葉が降ってきた。すとん、とそのまま座席に腰を下ろす。ごめんね、と情けないほどに小さく呟くと、なんで?と本当に不思議そうな応えが返ってきた。


『私、遅れたのに、こんな大切な日に遅れて、ホント、』


「あー、やめやめ!ほら、辛気くさい顔しない!、あのね、」


今日はホントに特別な日だからな。スペシャルデー!そういって差し出された箱とその言葉に彼らしいなと、頬が緩んだ。




white Xmas



(幸せ二人で、)
(一人です。)