かたり、と。そんな音と共に刀が床へと下ろされる。背後からは突き刺さるような視線を感じ、真横にはがっしり抱き付く小さな身体。この状況下でウチにどげんせいちゅうんじゃ(どうしろと言うんだ)。そう叫びだしたい衝動を抑えながら狐火が遠い目をしているこの状況に陥るには時は少しばかり前まで遡る。







『あー、取り敢えず?立ち話やなくて中入ります?』


くり、自分の後方の簡素な造りの住まいを指差した。まぁウチも此処に住まわせてもらっとるし本来ならそげな口叩けんのやがな(そんな口は叩けないんだけどな)。そんな狐火の思考はつゆ知らず、政宗は怪訝な顔でこちらを見やった。話は聞いてもらえるようだがやはり信用、までには及ばず。突き刺さる疑いの目が痛い痛い。取り敢えずひょい、と両手を頭の横にまで上げ、彼らに背を向けた。これで敵意が此方には無いことは伝わるだろう。ザクザクと雪を踏みしめながら足音が近付いてくるのがいい証拠だ。やれやれと溜め息をつきたくなったが、ここで異様なのは明らかに自分なのでなんとか我慢するとしよう。手を上げたまま顎で荒ら屋をしゃくれば、意図は汲み取ってもらえたようだ。さて、ここからが本番だ。話を聞いてはもらえるようだが肝心の内容を上手く説明しきる自信は全くといっていいほど無い。というよりかは考えていなかった。長くなりそうだ。やはりめんどくさい。

「Hey girls、勘違いすんじゃねぇぞ。」

「俺たちはお前らを傷つけてぇ訳じゃねぇ。ただ、」


夢を追っかけてる最中なのさ。you see?遠い異国の言葉を操る蒼い竜の愉しげなソレでいて切なげな瞳が僅かに見開かれた琥珀の瞳を撫でる。なぁいつき。ウチが居なくなったらお前はどういう顔するんだろう。さて、どうしようか。世界を見て回りたいと思った己自身に確かな笑みが零れた。





霜に眠る




(歯車回らぬ、)
(冬の夢。)



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