靴下


靴下が足りない。今さっき畳んだ洗濯物の間を全部見て、再び地面に直る。やはり片方だけ足りない。

「……祥吾」

思いつくのは灰色しかいなかった。勿論一緒に生活しているのは理由の一つだが、それよりもあいつは色々とおおざっぱだからだ。それに、俺の靴下ではない。だから必然的に祥吾となるわけだ。お互い相棒を無くした2つの靴下を宙に掲げて、俺は嘆息した。振り返れば丁度、祥吾がトイレから戻ってきた。

「何してんだ?シンタロー」
「お前に怒っているのだよ」
「え、なんで」
「自分の靴下を見ろ」

祥吾が困惑した顔で俺に従う。けれど、自らの靴下を目に入れた途端、吹き出した。

「ちょ、オレ今日ずっと左右違う靴下履いてたわ!やっべぇ!」

祥吾が自分の失態に爆笑する。そんな笑える問題じゃない。眉間に皺が寄るのを感じる。俺は持っていた靴下をフローリングに叩きつけて、祥吾を押し倒した。ゴン、と頭を打ち付けたようだが無視する。

「いだっ!!」
「祥吾、よく見ろ。俺は今どんな顔をしている?」
「っ…激おことかいうやつですね…」
「違う、げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだ」
「知ってたんですね、流石です」
「当然なのだよ。…祥吾、何をすればいいか分かるよな?」
「はい」

従順に首を振る祥吾から退けば、祥吾は俊敏な動きで靴下を脱ぎ洗濯機に入れ「おい洗濯機を無駄に使うな」「はいすいません!」急いで洗濯籠に入れて俺の前で土下座した。慣れたもので、ピシッと決まっていた。

「すいませんでした」
「今度したら許さんからな」
「はい!ありがとうございます!」

よし、本日も良好だ。


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