緑間が家の近くにあるバスケコートで自主練していた時、青峰の所で見かけた人を見つけた。

「緑間君やないか」
「…桐皇の」

桐皇学園高校バスケ部の元キャプテン、今吉翔一。
したたかそうな笑顔がよく似合う、と緑間は思った。

「練習しとんのか?」
「そうですが」

軽くボールをバウンドさせていれば、今吉はそれを目で追って口角を上げた。

「ちょっと貸し」

差し出された手を見つめ、数秒考えてボールをパスする。
満足気な今吉が走り出して、一気にゴール下に入り込む。
流石に元キャプテンだけあって、技能は素晴らしい。
綺麗に決まったゴールに、緑間は小さく拍手をした。

「最近練習しとらんから鈍ってもうたわ」

今吉はそう笑うが、鈍ってなどいなかった。
例え、今はボールに触れていなくても、彼は強い。
努力と経験が積み重なって彼は強くなったのだろう。
やはりキャプテンというのは偉大だった。

「ほな、そろそろ行くわ。ボール貸してくれてありがとうな」
「いえ、構いません」

今吉が大きく背伸びをして、コートを出て行く。
素直に、かっこいいと思えた。

「……あの、」
「ん?なんや?」
「受験、頑張って下さい」
「…ありがとう」

関西の訛りがどこかやさしかった。

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