やめろよ、と怯えた声がした。
真っ暗な部屋の扉を開けて、背後に光を携えて青峰が立っていた。
逆光のせいで、表情はよく見えない。
けれど、代わりに俺の顔はよく見えるのだろう。
というか呼んだ訳ではないのに、どうしてやって来たのだろう。
別段これといって理由が思い当たらない。
いや、強いて言うなれば、おそらく俺の手の中の銀色だろうか。
青峰を際立たせている白い光で、きらりと煌いている。
鈍い輝きに、青峰が顔を歪ませるのが見えた。
ふ、とつい笑ってしまうと、一層険しくなったように思えた。
あほだろ、と青峰が言う。
お前に言われたくない。
そう答えれば黙り込んだ。
ちかちかと脳裏で何かが光っている。
真っ白で穢れの無い光だ。
目が眩む。

「それ捨てろ」

銀色に指を這わせていたら、突然胸倉を掴まれた。
ああ、きっとあの光はこの男なのだろう。
どれだけ周囲に、運命に、自分に絶望しても、決して穢れはしない。
不意に、遠いなと感じた。
今は鼻がつきそうな程に顔をつき合わせているのに。

「お前を殺してからならいいのだよ」

虚勢を張って鼻で笑ってやる。
青峰はとても悲しそうな顔をして俺を見た。

「やってみろよ」

ぐ、と刃を握り締める。
浅黒い手が赤に彩られていた。

「どうせ出来ないくせに」

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