強く腕を引かれて、唇に柔らかいものを感じた。

「ちょ、室ち…んっ、待、」

呼吸困難になる程激しいキスを受けて、紫原は氷室の背中を叩いた。
苦しい、と抗議するようなそれに、けれど氷室は止めようとしない。
段々顔が赤くなってきて、意識が朦朧とする。
それをちらりと見て、氷室が小さく微笑んだ。

「はっ…ぁ…室ちん…何、なの…」

ようやく紫原を解放して、氷室が妖艶に目を細めた。
眼前の男の顔は上気していて、目も潤んでいる。
それが面白いのだろう。

「アツシ。オレの話聞いてた?」
「…はなし?」
「うん、今度どこかへ行こうって話」

上手く働かない頭を必死にフル回転させ、紫原は溜息を吐いた。

「…もっかい言って」
「聞いてなかったんだね」
「ごめん」
「まぁ、いいよ。アツシの可愛い顔が見れたしね」

にっこり、と氷室が笑った。

(怒ってるし…)

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