「紫原、行儀が悪いのだよ」
「もう少し菓子は控えろ。体に悪いのだよ」
「身だしなみはきちんとしろ。ボタンが取れているではないか」
「まったく…手がかかる奴なのだよ」


ミドチンはお母さんみたいだ。
箸の持ち方を注意したり、お菓子を奪ったり。
世話焼きなのか、オレがだらしなさすぎて放っておけないのか。でも、峰ちんや黄瀬ちんとかにも同じような事をしてたから、きっと世話焼きなんだろう。
やっぱりミドチンはお母さんみたいだ。
そしてオレを子供扱いしてくる。オレだってもう中学生なのに。
でもオレに世話を焼いて勝手に満足してる顔が可愛くて反抗できない。
今日だって、オレの緩んだネクタイを締めてくれて「よし」って言ってるミドチンが可愛くて、思わず抱きついたものだ。わたわた慌てるミドチンも可愛くて、もっとぎゅってしたら黙ってされるがままになった。綺麗なみどりいろの髪から覗いた耳が真っ赤で、それも可愛くて可愛くて仕方なかった。

「だからお前は駄目なのだよ、」

そして今もミドチンは絶賛お説教中だ。内容はほとんど聞き流しちゃってるけど。
ミドチンは大好きだけど、長いお説教は苦手だ。オレの事を思って言ってくれてるのは分かるけど、苦手なものは苦手なのだ。

「おい、聞いているのか?紫原」

突然話しかけられてびっくりする。

「ん?あー、うん。聞いてる聞いてるー」
「…聞いていなかっただろう」

まったく…とミドチンがため息をつく。
いや、聞いてはいたよ?そのまま流してたけど。

「そもそもお前は、」

あ、また一からお説教か。しまったなー。まぁ、お説教するミドチンも可愛いからいいんだけどさ、そろそろ疲れてきたし。どうにかしたいな…。

「うーん、よしっ」
「む?どうしたのだよ、むらさ…!?」

オレの名前を言おうとしたみたいだけど、途中でそれは遮られた。
理由は簡単だ。
オレがミドチンにちゅーしたからだ。

「ん…はっ、な、何を…!?」

少しした後口を解放してあげれば、ミドチンが赤い顔で戸惑ったように見上げてきた。やっぱり可愛いなぁ。

「何って、ちゅーだし。ミドチン知らないの?」
「いや、それは分かるが、なぜオレにそんな事、」
「なんでって…好きだから?」
「すっ!?」

素直な思いを伝えたら、ミドチンは変な声を上げて、もっと真っ赤になって俯いた。

「……す、好きだなんて、簡単に言うな、馬鹿め…」

眉をハの字に曲げて困ったようにそう言う姿が、堪らなく可愛くて抱きしめた。

「ごめんね。でもホントの気持ちだし」

馬鹿だ馬鹿だ、と弱く背中を叩いてくるミドチンを宥めながら、きっとオレには一生反抗期なんて来ないんだろうな、と思っていた。

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