短編 | ナノ

師範が死んだ。


私も同じ任務に付くはずだった。師範と同じ列車に乗り、無限列車の中に現れる鬼を倒し、またいつもの忙しい鬼狩りの日常へ戻る。そんなことを考えていたのに、それが夢物語になるなんて思いもしなかった。


ああ、なんで怪我なんてしているんだろう。こんな怪我、さっさと治してご一緒するべきだった。折れた骨のせいで、まだ歩けもしない。師範の体が帰ったであろう煉獄邸に駆け出すことも出来ない。ベッドから落ちて這ってでも外に行こうとする私を見て、蝶屋敷の子達が慌ただしく止めに入る。ああ、また迷惑をかけている。


「菘、治るものも治らなくなりますよ」
「…しのぶさん」


笑顔だけど怒っている彼女が私をさっさとベッドに戻した。

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