短編 | ナノ

甘く茹だる眸

今日は随分天気が良い。倉庫の窓の向こうに見える青空が気持ちいい。陽の光を浴びながら目を閉じれば、ひよ里と一護くんの特訓の声が先程よりもよく聞き取れた。騒がしいけれど、騒がしいのには随分慣れている。その声すらBGMになって、うとうととつい微睡んでしまう。
しかし完全に眠りに落ちる前にひよ里と一護くんの霊圧にびくり、と体が震えて少し目が覚めてしまう。流石に虚の霊圧の前では警戒してしまうみたい。眠れそうで眠れない。

かくん、と首が揺れた時ふと隣に暖かさを感じた。閉じそうな目を頑張って開けてみればお日さまのような、お月さまのような金色。


「なんやえらい眠そうやな菘」
『……だって、あったかいし』


再びかくんと船を漕げば、真子は私の肩をぐいっと引いて彼の肩に頭を預けさせてくれた。陽の温もりと人の温もりで、さらに心地良い。ゆっくりとした動きで頭を撫でられる、なんだろう寝かし付けてくれてるのかな。


「……菘見てたらなんや俺まで眠たなってきたわ」
『ふふ、真子も寝れば?』
「なんや、菘ちゃんが抱き枕にでもなってくれんのか?」


顔は見えないけど真子がニヤニヤ笑ってるのはわかった。ぐっとまた肩を引き寄せられる。こめかみの辺りに真子の唇が振ってきて、わざとらしくリップ音を立てる。それがなんだかくすぐったい。


「おやすみ菘」
『ん、おやすみ真子』


真子が隣にいると、虚の霊圧とかも気にならなくて今度こそ私は微睡みに身を委ねた。

この後二人揃ってひよ里の怒鳴り声で起こされるなんて今は知らない。

(20170318)




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