紫紺に融ける夜

大久保さんは…立ったまま私の両ほほに手を当てて私の顔を包み込んだかと思うと、そっと私の名前を呼んで、私の唇に大久保さんのそれを重ねた。


くちゅっ…


熱い…大久保さんの唇、熱い…

優しく、優しくその唇が、私の唇を吸っていたかと思うと、だんだんとそれは激しさを増し、舌で、私の唇をつつく。
少しずつ、少しずつ角度を変えながら、唇で唇を吸いながら、舌で、私の唇をつつく。

その、触れるか触れないかの微妙な舌先の感触が、私の体に甘い震えをもたらす。

私は大久保さんのキスに夢中になって…手に握り締めた大久保さんの手拭いを、ぽとりと離す。


「もっと深くさせろ…」
そう囁くと、少し開いた私の口の中に、大久保さんの舌が割り込んできて、私の歯の上を、ちろっ、ちろっと撫でる。

その微妙な感覚に私はぞくぞくと背中を震わせ、そっと声を漏らす。


「んっ…」

大久保さんは、言葉とは裏腹に、大久保さんは私の体が反応するところを探して、丁寧に、優しく、器用に、私の口内を舌で掻き回す。

びくん
「んっ!」

私が声を上げると大久保さんは、そこばかりを攻め上げて、私の息が乱れるまで繰り返し始める。


はぁっ…あぁっ…


キスだけなのに…どうして私、こんなに蕩けそうになっているんだろう…?





「小娘…何をそんなに呆けている」
私の口吸いに、目を潤ませ、吐息を漏らし、私の浴衣の合わせ目をきゅっと握り締め、とろけそうな表情をしているちひろ。

私が啄ばんだ唇が妖しく濡れ、ちひろの色艶を濃くし、私を容赦なく誘う。

「だって、大久保さん…」
「利通だ」
「え?」
「こんなときくらい、気を利かせて名で呼べ、小娘」
「お…と、利通、さん?」
私の名を呼ぶ、そのぎこちなさに、私はくっと笑う。

「それで構わん、小娘」
「じゃあ…私のことも、小娘って言わないで、ください…」

ちひろが私に甘える。
遊女たちの、うわべだけの甘えとは違う、私の芯を突き動かすような甘え…。

「ちひろ…」
「えっ…!」
「何を驚いている、後ろを向け」
「え?」

私はちひろを後ろに向かせ、背後から抱き締めた。

さきほど整えてやったばかりの浴衣の腰ひもをするりと解き、浴衣も湯文字も、すべて脱がせて一糸纏わぬ姿にしてやる。

行燈一つの薄灯りの中、淫らな曲線を描くちひろの裸体が浮かび上がる。

「あ…やっ」
「嫌なのか?」
私は意地悪く、ちひろに尋ねながら、背後から抱き締める。

「私に責任を取って欲しいのだろう?」

私はちひろの長い髪を避け、うなじを曝け出す。
その白いうなじに口づけ、抱き締めたまま舌を這わせ、撫で下ろしてやる。

ちゅっ、ちゅっ…
つーっ…

「あ…」

なだらかな曲線を描くちひろの背中を、私は口づけをしながら徐々に下に這わせ、時折舌で撫でてやる。
左腕でちひろの腰を抱き、右手でゆっくりと、ちひろの背筋に指先を滑らせ、女の悦点を探してやる。


お前は、どこをどうされれば啼くのだ?


私はちひろの耳を甘噛みしてやりながら、指先でちひろの背筋の上を滑らせる。

指が、背骨の上を通ったとき

「あんっ!」

ちひろが、女の声を漏らした。


「ここが悦いのかちひろ?」
ちひろの耳元で、そう囁く。



*



利通さんは私の浴衣を脱がせると、立ったまま私を抱き締めて、私の背中を一心不乱に撫で、指を這わす。

私は、そんな風にされたことがなかったから、利通さんに

「ここが悦いのかちひろ?」

そう甘く囁かれても、どう返事をしていいか分からない。

でも

利通さんの指が私の背骨の上を行き来するだけで、私の体に、甘い甘い疼きが走り、嫌らしい声が漏れそうになる。
私は唇をぎゅっと結んで、歯を食いしばって…その、甘い疼きに耐える。

こんないやらしい声聞かれたら、は、恥ずかしい…

「んっ…んっ…」
「ちひろ」
利通さんの愛撫が止まる。

「ここには、他にもう客はいないと言ったであろう?我慢しなくてよい…存分に、啼け」
そう言って…私の双丘の、敏感な赤い実を避けて両手で掴む。

掴む利通さんの手の中で、やわやわと淫奔なほどに形を変える、私の双丘。

「あっ…!っ」
そして私の双丘を揉みしだきながら、利通さんは、私の背筋に、背骨に、舌を這わす。

ぴくん

「ああっ…あっ…あっ…は…んっ」

ぴくん

ぴくん


声を抑えられなくなって、とめどなく、声が漏れる

体が震え、ぞくりぞくりと疼きが走る


利通さんの愛撫は、次々に、私を融かしてゆく

まるで火をつけたろうそくが、とろり、とろりと融けてゆくように

私の体が

融けて、ゆく



*



ちひろの背筋を攻め立てながら、持て余しそうに揺れるちひろの双丘を背後から弄ぶ。

柔らかく重く、私の理性を吸い取ってしまいそうな、私の手に吸い付くちひろの双丘をゆっくりと揉み、ゆっくりと形を変えてやる。

その私の腕の上に、ちひろの両手が重なり、ちひろが体内に女を感じるたびに、その手にきゅっと力がこもる。

その手に力がこめられるたび、お前の口から啼き声が零れ堕ちる。


お前の、私を求める卑猥な声が、私の本能を焚き付ける。


私をどこまで猛らせるつもりなのだちひろ?


…私は緩急をつけながら、ちひろの背筋を舌先で舐めてくすぐる。

それを飽くことなく繰り返してやると、我慢出来ぬのか、だんだんと膝の力が抜け、立っていられずふらつきそうになるちひろ。

「どうした?立っていられないか?」
ちひろの双丘を掴んだまま、耳元に口づけしながら、私はちひろに聞いてやる。

私の方に振り向き、切ない視線を投げ、啼き声を上げながら、ちひろは小さく頷く。

「何をそんなに腑抜けている…」
そう言いながら私はちひろを抱きかかえ、ゆっくりと畳の上に腰を下ろす。


そして…もう一度、ちひろの背中の喜点を攻め上げる。

私の口露で背筋を濡らしながら、だんだんと、女を露わにし始めるちひろ。

「はぁ…ん、と、利通…さんっ」
悩ましい声で、ちひろが私の名を呟く。

「ん?」
「利通さん…すき…あんっ…」
「そんな端たない声で、私を煽るのか?」
「…すき…利通さんが…好きっ…」
「そんなに啼かせて欲しいのか」




利通さんは…意地悪を言いながら、それでも私の背骨の上に舌を這わせる。

私はそれだけで、体がとろけそうになる。

今は言われる意地悪すらも、愛しいとさえ思ってしまう。
私が、利通さんへの想いを打ち明けると、利通さんは意地悪を言い、閉じている私の足の間に私の背後から左足を割り込ませ、私の脚を大きく開かせた。

「あっ…」
利通さんの右手が、指先が、爪先が、私の脇腹と、開かせた太腿の間をするすると行き来する。

そのかすかな愛撫が、ますます強烈な疼きを私に味わわせ、どんなに体がとろけているか、利通さんに伝えようと私は啼く。


「はぁっ…あ…んっ」
利通さんの左手が後ろから伸びてきて、私の左胸を掴む。

「もっと啼きたいのだろう、ちひろ?」
ときおり私の耳たぶに歯を立てながら、私の体中に、指を泳がせる利通さん。


ああん…は、あぁっ…


利通さんの器用な愛撫は、私の体に、嫌というほど疼きを行き渡らせる。


でも利通さんは


意地悪して…もっともっと、私が女を感じるところには、決して触れてくれない。


私の双丘に触れても、決して、その真ん中に実る赤い実には…触れて、くれない。

太腿の付け根を指で撫でてくれても…決して、私の蜜園には触れてくれない。

もう、私の体は
こんなにとろけてるのに

そんな風に意地悪…しないで欲しい…

もっと、もっと、女を感じさせて欲しい…

そんな気持ちが、口を突いて出る。

「いや…利通さん、意地悪…しないでください…」
「私の性分は、知っているだろうちひろ?」

そうして…利通さんはますます意地悪に、太腿の上だけに指を滑らせる。

それだけでも、体の疼きがあふれ出しそうなのに、利通さんは意地悪して、ほんとに触れて欲しいところには触れてくれなくて、私は脚を閉じようと、もじもじしてしまう。

でも

「何をしている」
利通さんは分かっているくせに、意地悪く足と手を使って、また私の脚を大きく開かせて私に恥ずかしい恰好をさせる。

私は利通さんの腕をぎゅっと掴んでに体を預け、顔だけを利通さんの方に傾けて、懇願する。


「いやぁ…焦らさないでください…」
「焦らしてなどいない」

私がふるふると首を振ってお願いしても、利通さんは、くっと笑って指先を私の肌の上で滑らせるだけ。
ときおり私の首筋に唇を付け、舌先でくすぐるだけ。


私は、もう、我慢が出来なくなって…


自分で、自分の蜜園に手を伸ばそうとする。

でも、利通さんは…


「ちひろ、ひとりくじりをする気か?」
ちひろが、女の喜悦に我慢が出来ぬのか、自分で自分を慰めようと、蜜園に手をやろうとする。

「あっ…」

私は咄嗟に、ちひろの腰ひもを手に取り、ちひろを後ろ手にし、手が使えぬように縛り上げた。


私はちひろの耳元で
「いくら端たないとは言え、私の前でひとりくじりは許さん」
そう呟き、ちひろの一番身悶えるであろう喜点を避け、もう一度体中を撫で上げてやる。


「はぁっ、はぁっ、い…いやぁ…利通さん、焦らさないで、くださいっ…はぁっ、お願い…利通さん…っ」

体をときおり、ひくりと動かし、啼きながら頭を私にもたれさせ、必死に哀願するちひろ。


身悶えるお前が、あろうことか愛しくて仕方ない
そんな風に私を惑わせた報いだ、ちひろ


「利通さぁん…っ」
ちひろが涙声になる。

「まったく、お前はふしだらな女なのだな…」

私はそう言い放つと

右手でちひろの蜜園に隠す雛先を

左手でちひろの胸の赤い実を

同時に、摘まみ上げた。



「あ…ああっ!」
ちひろが、甲高い声を発して乱れに乱れる。


まだ、軽く愛撫してやっただけだというのに

ちひろの蜜園はその女の蜜で満ち溢れ、雛先までもがその蜜に埋没するほどに、濡れて光っている。


くちゅ…くちゅ、くちゅくちゅくちゅ


雛先の被膜を除け、直に雛先を弄ると、妄りがわしい水音が、ちひろの啼き声に重なる。
やわらかいちひろの雛先は、私の指に吸い付くようで、お前の蜜でぬるぬるとしている。

私の指をこんなに濡らして…どういうつもりなのだお前は。


「ああっ…ア………ッ!」


首を反らして私に体を預け、女の快楽を弾けさせ、ちひろが、私の胸で絶頂に達する。

何を思っているのか、焦点の合わぬその目から、はらり、はらりを涙を零し、二度、三度と体を痙攣させる。

「アアッ…アンッ…」

卑猥な声を発しながら、ちひろの体が、いよいよ女になる。
薄灯りの下でも、ちひろの体が上気し、ほんのりと紅く染まっていくのが分かる。


「もう果てたのか?端たないぞちひろ」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…と、利通さんの…いじ、わる…」

私の名を呟きながら、なおも体を幾度となくひくつかせて、女の愉悦の海を漂流しているちひろ。



「私の遊びは、こんなものだと思っているのか?」
「えっ…?」
ちひろが私の方をおぼろげに見る。


…私は、まだまだ、ちひろを苛め足らぬようだ。
お前が誘うからこんなことになるのだからな…


私は自分に言い訳をしながら、体に力が入らなくなりつつあるちひろを布団の上に運んでやる。

ちひろを背後から抱き締めたまま、枕元に置いてあった寝乱髪を手に取る。

私はちひろを抱きかかえたまま、ちひろの目の前で封を切り、中から小指の爪の大きさほどの寝乱髪を取り出す。


「これ、何、ですか…?」
まだ息を乱して、ちひろがとぎれとぎれに言葉を発する。

「寝乱髪だ」
「ねみだれ…がみ?」
「その名の通りだ…寝ている女の髪が乱れるほど、女を感じさせる媚薬だ」
「び、やく?」

驚くちひろの唇を、私のそれで塞ぎ、その間に私はちひろの蜜園へ寝乱髪を挿入する。
濡れて潤む蜜園の奥は、寝乱髪をしっかりと捕まえ、飲み込む。

「っ!」

手を縛られたままのちひろは抵抗することもできず、黙って私の指を受け入れた。



*



「利通…さん…?」
私は、利通さんに高みに昇り詰めさせられて、少しぼうっとしているところに、いきなりキスされ、何かを蜜園に入れられる。

満足そうに私を見て意地悪く微笑んでいる利通さんの表情に、私は少し不安になる。

私を、もてあそんでるだけ、じゃないよね…?


「何…したんですか?」
私はまだ息が整わないまま、利通さんに聞く。

「ふっ…私が何をしたのかも気づかぬほど愉悦に酔っているのか?」
「利通さん…?」
「しばらくすれば分かる…お前の乱れる姿、存分に堪能させてもらう」

そう言うと利通さんはまた…私の背中に、うなじに、指を、唇を走らせ始める。

「あっ…!」
さっきよりもっと…もっと体が疼く。

体がおかしなくらいに反応する。

体のどこに指を走らされても、今の私は、すべてが体に疼きをもたらす。

ただ、私の腰を掴んでいるだけの利通さんの手の温もりすらも…私の中の厭らしい女を疼かせる。


あっ…はぁっはぁっ、はぁっ…はぁっ…


「女の体は…一度果てると、至るところ感じるのだな」
私がとめどなく啼き声を漏らすのを見て、利通さんがふっと微笑んで言う。

「ああん…っ、と、利通さんっ…」
「それともお前だけか?こんな厭らしい体になるのは?」

ちゅっ、ちゅっ、くちゅっ…

利通さんは、私の右耳を甘く、甘く噛んで舌を這わす。

淫らな水音を私に聞かせて、私をどんどん啼かせようとする。


体が疼くと同時に、私の蜜園から、とろりとろりと蜜が流れていくのが自分でも分かる。

体が、体がどんどんと、ただただ、利通さんが欲しくて仕方なくなっていくのが分かる。


そして…私の中が熱くなり、火照り、じんじんと痺れ始める。


「やぁ…利通、さん…あああっ…あ、熱いよぉ…」
「どこが熱い」
「な、中が…中が熱い…っ」
「寝乱髪が効いてきたか?」

利通さんは、私を弄ぶのをぴたりと止めると、そっと背後から私を抱き締める。

「見ていてやる…存分に乱れろ」
そう甘く囁いて、私を後ろから抱え込むようにして、私をきゅっと抱き締める利通さん。

背後から、私を覗き込むように見て、ふっと口の端を上げて、いつもの意地悪な顔で笑っている。


私は抱き締められているだけなのに
体は、疼いて、疼いて仕方ない。

すぐにでも自分の手で、自分を遂情させたいほど体に熱が溜め込まれているのに
後ろ手に縛られたその手首は、ぴくりとも動かせない。

脚を閉じて、蜜園を何とかしたいと悶えても
利通さんの足が、それを許してくれない。

身動きが取れずに私は、ただ、空しく手首を捩り、脚をじたばたさせ、啼き喘ぐ。


「いやぁ…と、利通、さん…お願い…っ!」
「もっと乱れたいのか」
「お願い、はぁ、はぁ、はぁ…さ、触って…欲しい」
「どこをだ?」
「さ、さっき…利通さんが、びやく…はぁっ、はぁっ…」

私は、すべてを言い終われないほど体がとろけている

もうおかしくなりそうなほど、体は熱を溜め込み、弾けさせるきっかけを待っている。

利通さんが、ほんの少し触ってくれるだけで、いいのに…


「私に頼みごとをするとは、なかなかいい度胸だちひろ」
「あぁ…はぁ、はぁ、はぁ…焦らさないで…っ!」
「焦らしてなどいない」
「い、いじわる…っ…利通さんの…いじわるっ」
「嬲られて感じているのはお前だろう?」


利通さんは、当たり前のように私に意地悪をする。

いつものように、ふっと口の端に笑みをたたえ、私を抱きかかえたまま意地悪く、後ろから私を見つめている。


「お願い…お願い、します、利通さんっ…」
「何をそんなに懇願しているのだ」
「お願い、です…触って、くだ、さい…」

もう、私はお願いしかできなくなる

意地悪してもいいから…

触って欲しい…っ


「まったく、湿深い女子だなお前は…ここか?」

ようやく、利通さんはお願いを聞いてくれる。

そして、その白くて細い指で私の太腿の付け根をするすると撫でる。

「あっ、あっ…ち、違う…もっとぉ…真ん中…」
私はこんなに恥ずかしいお願いをしているのに、利通さんは涼しい顔で私を見つめている。

「ならばここか」
「はぁ、はぁ…いやぁ…焦らすの、いやぁ…っ」
私は涙声で利通さんに懇願する。

お願い、お願い利通さん…お願いっ…!



*



私は、ちひろを焦らして焦らして、私に懇願させて極限まで焦らし、蜜園から存分に蜜を流させる。
ちひろの卑猥な姿を存分に愉しみ、私は私の加虐心を満足させる。

私は、お前にだけだぞ、ちひろ?
こんなにも、蜜を零れさせ、喘がせるのは。

どうでもよい女になぞ、自身の情欲を抑え込んでまで啼かせるようなことは、私はしてやらぬ。

お前の乱れ啼く声を、顔を…姿を見たくて、ちひろを幾度となく果てさせてやりたくて、ここまでしてやっているのだぞ?
有難いと思え、ちひろ…。



私はちひろの脚を思い切り開かせ、もう一度、ちひろの背後から腕を伸ばし、柔らかく光る雛先に指を伸ばす。

もう一方の手でちひろの蜜園を撫で付け、蜜溢れる中へ指を滑らせてやる。

ぴくん
「はぁんっ…!」

先ほどより悩ましくも卑猥な声は、私の鼓膜を刺激し、私の抑え込んだ情欲をいともたやすく呼び起こす。

その卑猥な声は私を駆り立て、私の理性をかき消してゆく。

私は、私を求め、呼吸するのも苦しげに、喘ぎ啼きながら体をひくつかせるちひろの、女の激情を震わせる喜点を擦り上げてやる。


ぐちゅ、ぐちゅぐちゅっぐちゅっぐちゅっ…

あぁっ…

私が指を蠢かすと共に、膠着するような恥ずかしい音が、私を、ちひろを包む。

その音に絡み合う、ちひろの啼く声がだんだんと甲高くなってゆく。

「こうして欲しいのだろう」
「はぁ、はぁ…あぁっ…!」
「こんなに恥ずかしい音を立てて…どういうつもりなのだちひろ、お前は」
「やぁ…い、いやぁ…ァ…」
首をふるふると振り、背を反らして…ちひろがまた、高みへと昇り詰める。

「ア…ッ…!」


先程よりもなまめかしく、先ほどよりも厭らしく、ちひろが女を弾けさせる。

どくっ…どくっ…

アァ…ッ……


情欲の赴くままに体をひくつかせて、誰よりも愛くるしい嬌声を吐き、もう一度、私の胸で果てるちひろ。
そのひくつく体がたまらなく、私はちひろを思い切り抱き締める。


「っ!」

ちひろが、無意識に、ちょうどその位置にあるその後ろ手で、私の下半身を掴む。

それで私の理性は…簡単に、壊れてゆく

「…ちひろ、何を掴んでいる、離せ」



*



私は…二度も利通さんに昇り詰めさせられて、しまった。

後ろ手に縛られた手首が歯がゆくて、私は何かを掴みたくて…何の意識もせず、何の意識もできずに指先まで、つま先まで快楽を走らせながら、私はそこにあったものをきゅっと掴んだ。


「…ちひろ、何を掴んでいる、離せ」
「え…えっ」
「それとも私の馬楽が欲しいのか?」
少し顔をしかめて、怒ったようなそぶりで私に囁く利通さん。

えっ…わ、私…何…

「まったく、端たないにもほどがあるぞ、ちひろ」
苦笑いしながら私の手を解いてくれる利通さん。

解かれると同時に、私はそれから手を放し、倒れそうになる体を支える。

「欲しいのか?」
利通さんが、もう一度背後から私を抱き締め、優しい声で私に囁く。

私は振り向いて、おぼろげな意識のまま利通さんの首に抱き付き、黙って小さく首を縦に振る。恥ずかしくて、顔を見られたくなくて。

そんな私を利通さんは、ぎゅうっと抱き締めてくれて…優しく、私の髪を撫でてくれる。

「ならば、そのまま私に乗れ」
「え、この、まま…?」
「私はこうして…」
私の腰をがしっと掴んで、自身の腰の方へ引き寄せる利通さん。

「居茶臼で女を啼かせるのが好きなのだ」
「あ…」
「今しがた掴んだようにして…自分で跨れ」
「そ、そんな…っ」
「欲しいのだろう?私が」

利通さんの目が…ぼんやりとした部屋の中で、きらきら光ってる。とても綺麗だけど、燃える様な、本能をたたえた目。

その目に圧倒されるように…私はそっと、さっきしたように、利通さんの下半身を掴む。

「!」
生身のそれは…利通さんの腰に付けた布からあふれ出してはみ出して、熱くて…その先を、利通さんの目と同じように濡らし、きらきらさせている。


ずっと…ずっと、私のために、我慢、してくれてたんだ…。


そう分かると、私はたまらなくなり、私は本気で利通さんを欲しくなる。

私のために我慢しててくれたのなら

今度は私が…利通さんを…


私は、掴んだ利通さんの男の上に跨り、そっと蜜園へ沿わせる。

「ちひろ」
「こうしたら…利通、さんも、あっ…」

私はゆっくりと腰を落とし、私の中に利通さんを導く。

「ああっ…き、気持ちよく…なれ、ますか…?」

中まで

奥まで

好きなだけ

あなたの想いを

たぎらせてください…



*



「ちひろ…っ」
「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ…」

ちひろが自ら私の上で腰をくねらせ、淫らな喘ぎを零しながら、私を銜え込み、舞う。

ちひろの中は熱くとろけるほどに潤み、柔らかく、私の男を舐めるように濡らしてゆく。

淫靡な水音が絶え間なく部屋に散らばり、それはちひろのか弱い嬌声をかき消しながら私の耳を犯す。

ちひろの背中を、もう一度体が跳ねるように、指先でつーっと撫でてやると、ちひろはより一層艶めかしい嬌声を上げて身悶える。


「ちひろ、そんなに…悦いのか?」
自ら腰を振り、私を擦り上げるようにして、切ない表情で、私の言うとおりちひろは居茶臼で快楽を求めている。

じゅぷっ、じゅぷっ…

卑猥な音が、私とちひろの繋ぎ目から何度も何度も弾けている。


「ああんっ…あんっ、あんっ…好き…」
「何をだ…」
「ここ、好き…」
ちひろは居茶臼で、女を擦られることが悦いのか、啼きながら止まることなく、私の上で妖艶に肢体をくねらせる。

双丘が私の目の前で艶美に揺れ、ちひろの卑猥さを色濃くし、私が今、ちひろを抱いていることを強く意識させる。

「私も、くっ…好きだ、これが」
「はぁん…私も、好き…?」
「何、のこと、だ…」
「私の…あん、あんっ…こと、は…?」

そうか。

私はまだお前に、愛の一つも囁いてやっていなかったな。

こんな最中に聞くなど
小狡いとしか言いようがないが

お前がそんな浅知恵の回る女子でないことは分かっている。

お前がときおり不安そうな顔をしていたのは、私の気持ちを知りたかったからなのか?

「利通、さんっ…はぁっ、はぁっ…」
「案ずるな…ふっ、愛しいと、思って、いる…」
「ほんと…?」
「お前は、信じぬ、かも知れんが…ここまで慈しんで抱いて、やった女はいないぞ?ほかに…くっ…」
「あっ…そんなに…意地悪なのに、ですか?」
「意地悪か?私は…」


まったく、ちひろは私に何を言わせるのだ…
告白なぞ…私に似つかわしくないことを言わせおって…


「信じぬのなら…また、極楽へ行かせ、るぞ…?」
「えっ…?」





私はもう、二度も昇り詰めさせられているのに

三度も…なんてありえないと思っていたのに

利通さんは

私をいとも簡単に

絶頂へと、導いてしまう


ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ…

ああんっ…あんっ…あんっ…!


利通さんは、お構いなしに私の腰を掴んで上に、下にと私を揺すり、深く深く、それを突き挿す。

私は利通さんの首に抱き付いて、肩に頭をもたれかけ、もう、されるがままに中を擦られる。

「はぁっ、はぁっ…ちひろ…啼け…っ」

ひとしきり利通さんの男で中を掻き回されると…

背中に手を回され、またその繊細な指先で、私の背中を撫でまわす。

私が利通さんの目の前に曝け出している双丘を、利通さんは掴み、その中心に生る赤い実を、その熱い舌で舐り取る。

ちゅるっ…ちゅくっ…


「はぁんっ!!…と、としみちさんっ…も、う、だめ…」

これ以上弄ばれたら、私はおかしくなってしまう…

「…おかしくなれ、ちひろ」

私の気持ちが聞こえたかのように、利通さんが耳元で呟く。

そして私の中に男を挿し込んだまま、利通さんの手が私の雛先に触れる。

「おかしくなって…啼いてみろ」

ちゅく、ちゅくちゅくっ…

「や…ヤァッ…!」



*



「!」
ちひろの体がびくっと震え、つながる私を捕らえるように、私を絞り上げるようにそれは蠢く。

「アァ…ンッ…!」

極楽に達するちひろの体。
また幾度となく、ひくり、ひくりと腰を震わせ、つながる私にその震えが伝わってくる。

ちひろの中から蜜が湧き出て、それはとろりとろりと溢れて流れ、布団の上を濡らしてゆく。

そして力果て、私に向かって倒れるように体を寄せる。

「また、果てたか?」
夢と現の間を彷徨い、意識を混濁させているようなちひろのおぼろげな表情。

私を意識させてやろうと、私はちひろの顔を引き寄せ、思い切り唇を吸う。

こんなに夢見心地の表情をさせていながら、私が口を吸ってやると、激しく私の舌にちひろのそれを絡めようとしてくる。

「んんんっ…う、うんっ…」

じゅるっ、くちゅっ

「んっ…も、もっと…利通さん…もっとぉ」
ちひろが甘えて私をねだる。

「もう三度も遂情させてやっているのに、まだ欲しいのか?」

…可愛い奴だ。


私は交合したままちひろを抱え上げ、脚を割り、布団の上に横たえる。

もう、何の抵抗もする力もないのか、布団にくたりと体を預け、うつろな目で、私だけを見つめているちひろ。

それでも私の名をか細く囁き、私を欲しいとねだり、啼く。

ちひろの上に覆いかぶさり、愛しいその目を、じっと見つめる。

「利通さん…すき…」
「ならば…私を、遂情させろ」
「え、えっ…どう、やって…?」
「…嫌と言うほど、突き上げさせろ」

私は乱された浴衣を脱ぐと

ぐちゅっ

ぐちゅっ

あんっ…あんっ!


二度、ちひろの最奥まで突き上げる。

「くっ…こうして…突き上げる、ぞ?」
「あっ…はぁっはぁっ…利通さんっ…」
「いいな」
「して…わ、私を、おかしく、して…っ」

その言葉に私は我を忘れる

ちひろの最奥まで

これでもかと言うほど

激しく

突き上げる





ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ…

あっ、あっ、あっ、あっ


利通さんが、獣になる

私を、ようやく捕らえた獲物のように、その男の証で、私の中の中まで、激しく突き上げ、弄ぶ

もう、何度も高みに昇り詰めさせられている私は

すでに体に力が入らない

ただただ

利通さんを欲しがるように

啼いて、啼いて

啼き喘いで

あなたの背に爪を立て

最奥に突き上げる

あなたの愛を感じるだけ




ちひろが乱れに乱れ、女を曝け、啼き喘ぐ

私が最奥まで突き上げるたびに

ぐちゅりと蜜が溢れる卑猥な音が

私とちひろの性が擦れ合う音が

二人の肉がぶつかる音が

お前と、私の鼓膜を淫らに揺らし

紫紺に融ける夜を染めてゆく

たたただ

お前が欲しい

激しく、激しく

貫いて

ちひろ、お前を

私のものにさせてくれ



「はっ、はっ、はっ、ちひろ…口を、吸え」
「あんっ、とし、みち、さんっ…」


私は言われた通りに、利通さんの首に手を回して…引き寄せ、唇を重ねる。

熱い吐息が私を包む。

利通さんの熱い鼓動が、律動する波が

利通さんの額から零れ落ちる汗と共に

私の体に伝わる


利通さんの激しい律動が、

突き上げられる体を

もう一度、極限へ導こうとする。

「んーっ!んっ…ンンッ…!!」
「くぅっ…」


ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ…


どくんっ!


「ンーッ!」
「クッ…ちひろ…啼、けっ…」

私はもう、啼くことができなかった

なぜなら

激しい利通さんの律動は

私から

意識を奪っていってしまったから……



*



どのくらい気を失っていたのか、眠っていたのか、私は目が覚めると、私はお布団の中にいた。

視線を横に向けると、同じお布団の中に、仰向けになって利通さんが眠っていた。

「利通…さん?」
私はそっと声をかける。

私の声にはっとして、すぐさま目を開け、私の方を見る。



「大丈夫か」
「ごめんなさい…起こしちゃい、ましたか…?」
「眠ってなどいない」
いつも通り、嫌味っぽい返事をする利通さん。

「お前が明け六つになっても目覚めなかったら、どうやって運ぼうか思案していたところだ」
「そんな…ちゃんと起きます、よ」
「女中のうち、いつも一番最後まで寝ているのは誰だ?」

くっと笑って、嫌味を言う利通さんは、もういつもの利通さんだった。

「も、もう…そんな意地悪言わなくたって…いいじゃないですか!ずっと…ずっとやさしかったのにっ…」
そう言いながら、さっきまでの戯れを思い出して、私は急に恥ずかしくなる。

「私が優しい?」
私のそばに寄ってきて、私を裸の胸に包んでくれる利通さん。

「あ、う…ん、意地悪、だったかも…」
「ふっ…どっちなのだ」
「やっぱり、優しかった、です…」
裸の胸に包まれて、今更ながらまた、私はどきどきしてきてしまい、ついそんな言葉を口にしてしまう。

「ならば、私はお前に対して責任を取れたか?」
「そうでしたっけ…?」
私の間の抜けた返事に、利通さんはがっかりしたようで、大げさにため息をつくと

「私が身を粉にしてお前を愛してやったというのに…いい気なものだな」
「だ、だって…利通さんがいけないんですよ?」

愛して、なんて言われて、私はますますどきどきしてきてしまう。

「…わかった。次からはどこへ行くときも必ず小娘に出先を伝えるようにする。毎度毎度、茶屋を貸し切りにするほど我が薩摩藩の財政は豊かではないのでな。それから小娘」
「はい?」
「人前で…利通と呼ぶな…面はゆい。少なくとも、私と…ちひろ、二人きりのときだけにしろ」
「どうしてですか?」

せっかく名前で呼ばせてくれるようになったのに。

私は不満で、利通さんの胸の中から見上げて聞く。


「お前のような小娘に、名で呼ばれてるなど廻りの者に知られたら面目が立たんだろう」
「くすっ…分かりました、利通さんっ…」
暗くてよく見えないけど、利通さん、声で照れているのが分かる。


「本当に、分かっているのだろうな…もし…」
「もし?」
「人前で名を呼んだら…今日より酷い罰を与えるからな」

少し、意地悪く、でも優しく笑う利通さん。

罰って言っても、それはきっと…私が、利通さんから、ますます離れられなくなる罰…だと分かる。

「何を嬉しそうな顔をしている」
「…してませんっ!」

私は、利通さんの胸に顔を擦り付けて、祈る。

どうか、どうか…この幸せな日が、ずっと続きますように。

利通さん…大好き……。





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