天然の策士



「ついつい」



長州藩邸はとても重い重い空気が漂っていた。


(ちひろ)
小五郎さんによる高杉さんへのお説教が始まった。
高杉さんの傍にいて止めなかった私もその対象として同じく高杉さんの隣に座っていた。

いつもとは異なる、あまりの小五郎さんの怒りの気配に私は口を挟むどころか小さくなって気配を消すことに専念していた。



(長州藩 高杉晋作)
小五郎の説教が延々と続いている。
いや、寧ろ怒りが加速しているかのようだ。

「晋作!!!なし、お前はいつもそうなんじゃ!
いっつもいっつもやしばっかりしおって!
こんなにいうとるのに…。
おい、聞いちょるんか」

「聞いちょる!聞いちょるから!!」

あまりの小五郎の剣幕にさすがに慌てて反応を示す。

「大体なぁ!」と更に長引きそうになったところに
恐る恐る「こ、小五郎、こまいこと言うな…」と反論の言葉を重ねようとするが、

「なんちゅうた?」

火に油だったようだ。

小五郎の額に青筋が見える。
あと一刻はお説教が続くなと覚悟を決めた時、ちひろから思わぬ言葉が出た。


(ちひろ)
「こ、小五郎さん…方言…か、可愛い…」

そう口から出てしまった言葉に部屋にいる二人が凍りつく。

つい出てしまった言葉に「あ!」と手で口を覆うがその言葉が消えるわけもなく静けさが部屋に広がった。

我に返った小五郎さんがごほんと咳払いをし、少し罰の悪そうな表情で

「…今日はここまで。晋作わかったな。」

とお説教を打ち切り、踵を返し部屋から出て行った。

その横顔は頬から耳にかけて真っ赤になっていたように見えた。

「ちひろ〜!助かった!!さすがオレの嫁!」

「違います!」

「即答するな!!!」

長州藩邸はいつもの空気が戻っていた。





「after story**天然の策士」



高杉さんの手から逃れつつ、部屋を出て行った小五郎さんの背中を追いかける。

「小五郎さ〜ん!待ってください」

追いついた時には、先ほどちらりと見えた赤い耳はもうすっかり元通りになっていて、
振り返った小五郎さんはいつもの小五郎さんだ。

「なんだい?」

「さっきみたいに方言で話してみてもらえませんか?
私、もう一度小五郎さんの方言聞いてみたいんです。」

急なお願いに一瞬きょとんとした表情になったが、すぐさま真面目な顔で

「ちひろ、此処京では長州の人間だと分かれば、捕縛されたり、悪ければいきなり切り捨てられる事だってあるんだ」

真剣な眼差しで小さな子どもを窘めるように話す小五郎さん。

「だからだめだよ」

「でも、さっきは」

「さっきはつい興奮してしまってね。あんなことじゃ駄目なんだが…」

ふうと自嘲するように小五郎さんはため息を吐いた。



ちひろはまだ納得がいかないらしく、手を顎の下にあて、思案するようにじぃっと一点を見つめている。
その様子が可愛らしくて見つめていると、急に羽織の袂に手を添えられた。

はっとちひろを見ると上目遣いで花の様に微笑んで、

「じゃあ、私と二人っきりで興奮するような事があれば方言が出ます?」

「………んな、なんちゅうことをいうんじゃ!」

「あ!でた!!かわいいー♪」

(…やられた…)










《アトガキ》
相互記念に月夜に恋して…のmika様に捧げます。
リク頂いたメールにあった言葉を使って書いてみました。
クスリと笑える話になっているでしょうか?(方言はちょっぴりしかでてませんが。。。)
「ついつい」のアフターストーリーになっているので、元のお話も一緒に連れて帰って頂いてOKです。
リンクしていただいてありがとうございました!
これからもよろしくお願いします♪
20110317 蘇芳


「日々是好日」の蘇芳さまより!
相互記念に素敵なSSを頂きましたw

「ついつい」のafter storyを妄想してます。という話をしたら…
翌々日には実現化して下さって!驚きました〜〜
とっても嬉しいサプライズ(*^^*)

おまけにこの小娘ちゃん…どことなく私に似てるんですよね。。
発言とか喜び方とかイロイロ(笑)
予想外にシンクロしてしまい、読み返す度に桂さんに名前を呼ばれるところでドッキドキと緊張しています…!

笑いとトキメキの調味料…日常生活のミネラルです☆
こちらこそ、ありがとうございます!(;д;)/
今後も宜しくお願い致します♪

mika


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