片言隻句の七夕飾り [2/26]
桂さんの一言一言が胸にしみる日々なんです――
それこそ最初は怒られてばかりというか……
呆れられてしまったり、驚かれたりすることが多かったけど、
最近はそういうことも減ってきて、逆に感心されることも時々あるくらい……
桂さんはわたしに沢山のことを教えてくれる。
難しい政治のことから身近な生活術や護身術とか剣術とか、
礼儀作法や身だしなみ、女の子としての心得とかを、
手短に、簡潔に、優しく丁寧に、根気よく親切に……
それから、わたしが間違った事をした時には、ちゃんと厳しく叱ってくれる。
桂さんの知識は多岐にわたっていて、とにかく凄いと溜め息ばかり。
最初は分からないことが多過ぎて飲み込めず、嫌煙してたわたしだけど、
だんだん桂さんのことが分かってきて、どんどん彼を好きになって……
自然と講義も熱心に受けるようになっていったからかな?
いつからか桂さんが、長ーい講義やお説教の後には御褒美をくれるようになって、
褒められたり、お礼を言われたりすることが多くなって……
なんだかわたしに、甘くなった――そんな、気がする。
それはとてもくすぐったくて嬉しいこと……
頑張りを認められたようでもあり、
桂さんがわたしに気を許してくれてるみたいに思えるから。
御褒美にと用意してくれる菓子折よりも、ずっと甘いあなたの微笑み。
どこかですれ違った時は、必ず気付いて目配せしてくれる優しさ。
「おはよう」とか「ありがとう」とか「おかえり」とか「おやすみ」とか……
毎日交わされる決まった言葉と、
その時々で変わる時節を含んだ言葉と、
豆知識みたいに添えられたりする一言一言。
短いなかに、些細な変化を見いだすのは楽しくて、幸せすら感じる日々……
胸に降り積もる言の葉は、キラキラ輝く宝石のような、わたしを動かす原動力。
こんなにも染み込んで、染み渡るのは、
飾られた言葉じゃなくて、あの人の努力と歴史が詰まっているから。
それだけじゃない、大好きなあの声、視線、話し方……
温かいそれらが発する言は、決して色褪せることのない、わたしの宝物なんです。
だからこうして、空へと立ち昇る色とりどりの短冊に……
言葉の欠片をたくさん集め、願いを込めて書き記そう。
ひとつ、またひとつ――
ひらりひらひら……
手の平から飛び立って、舞い上がるはわたしの願い。
天に届けと思いを馳せて――
いつか願いが叶いますように……
桂さんみたいな人になれますように……
桂さんに想いが届きますように……
勇気と自信が持てますように……
桂さんに認められるような、大人の女性になれますように……
沢山の願い。
徳のある言葉の裏側に込められた、わたしの思惑と下心……
風に乗って揺らぐ姿は迷い悩むわたしのようであり、つかみどころの無いあの人みたいだと思った。
何を考え、わたしのことをどう思っているのか、
いつまでも経ってもサッパリ分からない。知りたいけど、知りたくない……
覚悟を決めて、確かめられる自分に……
1日も早くなりたいと、願いを込めて書き記した言の葉。
わたしの宝物であり、目指すものであり、あの人の象徴であり……
ある意味プレゼントだと思う。言葉と知識の贈り物……
それはとても大切な、わたしの生涯のお守り――
moon≫断編≫「しとやかなる夜半に」に続く
2011/07/07
七夕SS(昼ver)
願い事は指標かも…桂さんの授業なら喜んで受けます^^
【片言隻語】へきげんせきご
ほんのちょっとした言葉。片言隻句。一言半句。
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