隣の国との物語 [3/3]
高杉「聞いて驚け…!なんと王女が結婚するんだ!!」
王女「どこの王女の話ですかそれは…」
高杉「ここのだ☆」
王女「はい?」
高杉「だから!おまえ結婚するらしいな?相手は確か、隣国の…って聞けっ」
私は直ぐさま部屋を飛び出し両親の元へ向った。
(あの話は断ったはず…なぜ!?)
姫「父上、一体どういうおつもりですか…!」
王「おお、そろそろ来る頃じゃと思っておった」
姫「高杉から聞きましたよ。私が結婚するだなんて…冗談はよしてください!」
王「王女よ…私は本気だ。既に見合いの日取りも組んである。相手は中身も外身も申し分無い男…其方も気に入るだろう」
姫「勝手に決めないで下さい!それに私はまだ17です…!王族の、婚姻による独立の期日は20歳のハズでしょう?なのにどうして急に…」
王「国の法律ではそうなっておるがな、ワシと王妃は…18歳の誕生日までに結婚させようと決めていた」
姫「そんな横暴な…何故です!なにか特別な理由があるのですか?」
王「まぁ、色々とな……これは父親として娘の未来を案じての措置じゃ。其方は18になるまえにこの城を離れた方が良い…それが馬車で半日の距離にある隣国なら、遠すぎず近すぎず打って付けじゃ。
好きでこうしている訳ではない…王妃も他国へ嫁ぐことを嘆いている。しかし、それを凌ぐ程の事情があるのだ…分かっておくれ…頼む」
父の悲痛な面持ちに、私はこれ以上の追求を諦めた。
その大層な事情とやらは、私の未来に関わることらしい……
では何故それを本人に伝えない?なぜ隠す必要が?
そもそも、この急な縁談の知らせ…本当に前もって計らいを決めていたことなのだろうか。
私は広間を抜け、塔の階段を上りながら、
感情の渦を飲み込んで、大きく溜め息を一つついた。
(父や母が私抜きに考える私の幸せな未来とは、一体なんなのだろう・・・)
尊敬し、信頼している両親に感じた、初めての疑念と不安。
実の娘といえどもカゴの中の鳥ではないのだから、
王女として自分の進む道は自分で選び、切り開いてゆきたい…
そう考える私の事をあの二人は知っていて、納得し応援してくれていたはずだった。
諦めにも似た、答えの出ない自問自答を繰返しながら、自室に戻ると…
私のベッドで高杉が大の字になって眠っていた。
(人の部屋で堂々とまぁ、なんて能天気な……)
その姿にクスリと笑うと、急に落ち込んでいたのが馬鹿らしくなってきて…
私は目の前の幼なじみを見習い、今後ことを前向きに考えることにした。
(両親が心を痛めてまで私のためにしてくれた計らいだ…信じよう。相手の事も、実際に会ってみるまでは分からない。見合いの一つや二つなど……いくつでも!やってやろうじゃないかっ)
心の中で高杉に礼を言いながら……私は彼女を激しく揺さぶり、引っぱり起こした。
「起きろ!さぁ、さっきの話の続きだ…!結婚相手はどんな人だって?知っていることを言いなさいっ」
――そのころ、隣の国でも…――
同じように唐突に、同じような知らせを受けた者がおりました。
しかし反応は実に淡白そのもので、「そうですか、わかりました」の一言のみ。
その国の王と王妃は、息子が相手の姫に冷たい印象を与えてしまうのではないかと不安に思っておりました。
そんな両親の心配などお構いなしに、当の王子は内心とても楽しみにしていたのでした。
(うわさに聞く容姿端麗で文武両道な王女とは、一体どんなお人だろう…興味深いな)
2011/01/28
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