それから… [2/3]


緑「それにしてもリョーマさん、なかなか粋なことしますね…」

赤「はぁ!?」

緑「だって“美しく健やかに育つ”って美貌と健康を約束してくれたんスよ?」

青「死んでしまっては意味がないだろうが…」

緑「それは…そうッスけど。でも、少なくとも18歳になるまでは…王女様は怪我も病気もせず、しかも美少女になることが保証されたわけッスよ!?やっぱ凄いッスよリョーマさん。複数の魔法を一つの贈り物で…俺にはそんな力ありませんから」

赤「感心してる場合か!アイツはもう闇にのまれた妖精だ。俺たちとは相容れない種族も同然なんだ!」

青「どうせアイツのことだ、何も考えずに付け加えた戯れ事だろう…それに魔力が伴うのだから厄介な話だ。迷惑極まりないっ!」

緑「そうッスね…リョーマさん、なぜ闇の魔術に手を出したのでしょうか」

青「いい加減にしないかシンタ…今はリョーマのことを考える時ではない。どうやったら王女様を救えるかだ。それをやるのはお前自身なのだぞ?」

赤「シンタ、おまえの能力でリョーマに勝るものはあるのか?いったい何ができるんだ?」

緑「うわ…さり気なく酷いッスよ、イゾウくん…俺にだって得意分野くらいあるッスよ!!失敬な!」

青「その得意分野とは?」

緑「えっと、それは…“物探し”とか“物体浮遊術”、それから“安眠術”も得意ッス!」

赤「役に立たないような能力ばかりじゃないかよ…」

緑「えぇ!?“物探し”はかなり便利ッスよ?重宝してるんスから俺♪」

赤「あのなぁ……・・・先生?どうかされましたか?」

青「ふむ、それでいくか…」

赤「え?」

緑「物探しッスか?」

青「馬鹿者、安眠術のことだ…ようは死ななければ良いのだ。それさえ防げばあとは何とかなるだろう」

赤「???」

緑「そうか…!そういうことッスね、タケチさん!!」


青と緑の妖精が笑顔の中、赤の妖精だけは戸惑い顔だったが…三人の妖精は、こうして勝機を掴んだのでした。
黒の妖精を上回る魔術はなくても、正規の魔法で上回るものがあれば良い。それがすなわち安眠ならば、王女には死ぬのではなく安眠してもらおう。
そいうことで話はまとまり、王も王妃もその事を承諾したのでした。


緑(糸車の針が刺さっても、王女様は死にません…深い眠りにつくだけです。そしていつかきっと目を覚まし、再び幸せに暮らすでしょう…)



こうして、怒濤の一日は幕を閉じ、再び平和な日々が訪れたのでした。







そして17年の時が過ぎ・・・

王女は与えられた贈り物のおかげか、優しく賢くて、健康で美しい娘に育っていました。
持って生まれた才能は豊かで、学術に限らず弓や馬や剣術など…武術にも優れていたそうです。

同じ日に生まれた幼なじみである料理人の娘と懇意な関係にあり、
身分は違えど良きライバルとして、皮肉を言い合いながらも切磋琢磨していたとか。



――そんなある日の出来事でした――



いつものように王女が自室で学術書に目を通していると、
遠慮を知らない幼なじみが、バーーンと勢いよく扉を開けながら叫びました。


高杉「大変だ大変だぁーーー!!」

王女「……なんですか騒々しい。いつも言っていることですが、ノックくらいなさい」


ドアに背中を向けたまま、眉間にシワを寄せて王女は溜め息混じりに言いました。


高杉「おまえ知ってるか!?」


――仮にも王女の私を、“お前”呼ばわりする人間は、城中…いや国中を探してもコイツくらいだろうな――

そう思いながらも、苛々することがあっても決して突き放そうとはしない王女。
ふんっと鼻で笑いながら、わざとウンザリした素振りで…男勝りな幼なじみを振り返って言いました。


王女「…何を?」






――さて、いったい今日は何を言い出すのでしょうね…この人は――


おしゃべりで、快活で、男女問わず友達の多いこの娘。
彼女が運んでくる知らせや噂話は、興味深いものも多く…意外な人物の意外な側面が見えるのは面白い。

多少騒がしくはあるけれど、私はこうして始まる一日を案外嫌ってはいないのかもしれない…


私は楽しそうに笑っている彼女の口から出る言葉を待ちながら、
ふと横目に映る窓の向こうの青空が、雲一つない澄んだ青でキレイだと思った。


(今日もいい天気だ…)






2011/01/22


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