ランプレヒトの杞憂

気が重い言伝

 母親から伝言を頼まれたこともあり、ランプレヒトは身支度を終えた後、騎士団長の執務室に向かっていた。
 しかし、その顔色は優れない。
 最近ようやく家の雰囲気が良くなってきた(エックハルトに活力が戻り、母も上機嫌なことが増え、父の帰宅頻度も増えた)ことから、今日あった出来事が気になって不安だったのだ。

 急に訪ねたランプレヒトが盗聴防止の魔術具を差し出して、家族として話したい旨を伝えると、カルステッドは軽く驚いたが片眉を上げながらもすぐに握る。


「父上。先程の、あの巫女見習いのことですが……」
「ああ、あれか。そなたも驚いたであろう?」
「はい。上級貴族の娘なのですよね? あの、まさか、父上と第三夫人との……?」
「ぶわっはっは! なるほど、そうきたか。いや、そなたが心配するのも当然か……案ずるな。あの娘は私の隠し子などではない。しかし、身内であるのは確かだ。そうだな……ランプレヒト、そなた妹が欲しくはないか?」

 父上がニヤニヤと笑いながら質問する。

「そなたも兄と弟ばかりでは詰まらぬだろう。あのような妹なら欲しいとは思わぬか? そういえばエルヴィーラも娘を欲しがっていたか……さて、私の勝ち目はどれほどか。悩ましい問題だな……」

 ぶつぶつと楽しそうに呟く父親の姿に驚くも、家にまた嵐を呼ぶような事実がなかったようで良かったと安堵するランプレヒトだった。
 あの巫女見習いは名をローゼマインというらしく、父上の第三夫人であった方に名が似ていたこともあり、かなり不安だったのだが……この様子だと本当に杞憂であったようだ。

 このことはまだ口外法度だが、それとなくコルネリウスに護衛騎士になる覚悟があるかどうか探っておいてくれ、などと頼まれる。

 あの娘の護衛騎士ということか。
 確かに歳は近いが……我が家に打診が来るということはつまり――領主候補生になるということか! しかも身内と呼べるほどの親戚ということは、ライゼガング系なのだろう。

 まさかの事実に驚愕するランプレヒトだった。

「あの娘は我々の宝であり、希望なのだ……」

 父親(カルステッド)の声が妙に耳に残った。


2020年11月10日
本編での時系列的には「癒しの儀式」の後になります。

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