夫婦の絆を検証診察
「わたし、実はずっと気になっていたのですが……本当にフェルディナンドの相手はわたしで間違いないのでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「だって、わたしの手には印がありません。本当は番(つがい)の両方に現れるものなんですよね?」
「それはシュタープを得れば解決するはずだと話したであろう?」
「でも、ただの予測ですよね? もしも現れなかったら……フェルディナンドはわたしをどうするつもりですか?」
わたしは自分のまっさらな右手と、彼の右手に浮かぶ印を見比べながら話していた。
「ふむ。そうだな……私は確信しているが、君にはそれが感じられないから不安になるということか?」
「どうなんでしょう? 自分に自信が持てないだけかもしれませんね……どうしてわたしなんだろう、とは常々思ってましたから」
「……そもそも、印は手や腕などの見えやすい位置に現れるものとは限らぬのではないか? 確かめてみるか」
そう言うなりフェルディナンドは躊躇いもなくわたしの寝衣を脱がせ始めた。
「ちょっ、ちょっと待って! なんで急にそうなるんですか?!」
「妻の不安を解消してやるのは夫の義務だろう?」
「そんな義務はいりません! 確認だけなら一人で出来ますからッ」
「あぁ、この場合義務≠ナはなく権利≠セと言うべきか。自分一人では見えぬ場所を確認してやれるのは夫だけだ……安心しなさい、痛いことなど何もせぬ。検証するだけだ、診察と変わりない」
「嘘っ。ウソですぅ〜……その目は研究したいと言っている目です! フェルディナンドのえっち! スケベ! 変態!」
「意味は分からぬが貶されていることは解るぞ。心外だな、これも夫婦の絆を確かめるため……そして君の憂いを取り除くためにするのだ」
わたしは問答している隙にあっという間に素っ裸にされて、身体中の隅から隅まで……とても口には出来ないところまでバッチリ見られて確認された。恥ずか死ぬかと思った。
そして、あれだけの恥辱に耐えたのに、印は結局どこにも見当たらなかったらしい。
落ち込むわたしを余所に、珍しい現象の検証実験ができたからだろう、わたしの未来の夫はとても満足そうだった。
ブツブツと「やはり――」とか何とか言っていたから、きっと仮説通りの結果だったのだ。予測できてた検証のために脱がせて弄るなんてひどい。
誰だこの研究狂いに夫婦同然≠ニか言って許可を与えた人物は! ――って、犯人はわたしだ!
まだ嫁入り前の(体は)七歳なのに……なにか大切なものを失ってしまった気がするわたしだった――