新事実

夜、ふと思い立ったナナミは、自分の国民番号を調べることにした。
スラム街のストリートにいたとはいえ、赤ん坊の時に登録だけはされているはずなのだ。

ハンターライセンスを使えば簡単に調べられるはず。
戸籍をしっかり作らないと結婚ができない。病院にも行けない。

そんなことを思い出したのだ。
組に所属し、納税をするようになったことで得た知識だった。




結論から言えば、調べることはできた。

もろもろの手続きをして、さまざまな個人情報を紐付けることにも成功した。これで戸籍を作ることができたも同然の状況になり、それ自体は喜ばしいことなのだが、知り得た新情報にナナミは困惑していた。

なんとナナミの年齢が満17歳だったのである。
7月7日が誕生日とされており、それを迎えても18歳。4月4日で19歳になるクラピカの歳下だった。

(外国人って発育いいもんなぁ……)

ナナミが前世の記憶を取り戻した時、自分のことを15歳くらいと判断したのは日本人だった頃の感覚で。本当は13歳だったということである。

つまり、ハンター試験を受けた時、ナナミは16歳だった。これも訂正しておかなければならないことだった。ハンターライセンスは一番便利なアイテムで、他に免許証のないナナミには身分証明書に等しい。
ナナミは溜め息をついた。










偽証は強欲と等しく最も恥ずべき行為だと考える

ナナミは懐かしいセリフを思い出していた。

志望理由を問われ、初対面で話すには自分の内面に深く関わりすぎているからその質問には答えられないと船長に話したクラピカは、清廉潔白そのものだった。
今でこそマフィアの若頭なんかしているが、性格はそう変わってはいない。クラピカは私欲にまみれた人間や不正をする人間を嫌っていた。

そんなところも好きなわけだが。それはさておき。

「わたし、クラピカに最初からずっと嘘ついてたことになるのかぁ……」

もちろん故意ではないから偽証とは違うけれど、偽っていたことになるのには変わりない。
知らなかったのだから、きっと許してくれるとは思うけれど……クラピカが自分の本当の年齢を知ってどう思うのか、少し気になるナナミだった。










翌日の朝――

またしても帰って来なかった(今度は仕事で居残っていた)クラピカと話すため、ナナミはいつもより早く出勤する。

そうして仮眠室ではなく職場のソファーで寝るクラピカを発見し、気配を消してそろそろと近づいて行くのだった。

「クラピカ、おはようー……」

そっと耳元に囁く。ちょっとした悪戯心だった。

「愛しのナナミちゃんが来ましたよー……」

自分で言ってて恥ずかしいが事実である。と思いたい。

「…………」

「眠り姫は王子様からのキスで目覚めると相場が決まって――」

「誰が姫だ」

ぱちりと目を開けたクラピカだった。

「やっぱり起きてた」

「不自然に気配を消すヤツがいたからな」

むくりと起き上がったクラピカにかかっていたブランケットを手に取るとそのまま彼の隣に座って畳みはじめる。
クラピカは部屋の時計を確認し「まだ6時か」と呟いた。

「やけに早いが、なにか用事か?」

「最近クラピカが帰って来ないからね。淋しくなって会いに来たのですよ」

「そうか」

「……というのは建前で」

「違うのか?」

「もちろん違わないけど、用事があったのも本当。わたしクラピカに話さなきゃならないことがあって……」

「なんだ?」

クラピカが少し身構える。

「実は……前にクラピカが20歳になったら正式に籍を入れようかって話したことがあったじゃない? あれ、ちょっと延期してもらうことになりそうなのです」

申し訳ない思いからか、歳下だったという事実からか、わたしは無意識に敬語になっていた。



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