最初で最後の夜
ホテルに戻ってから、ベッドに座ってまた口付けし合う。
雰囲気からしてこのまま一線を超えてしまうのだろうなと思った。
少なくともクラピカはきっとそのつもりだ。
最初で最後の夜かもしれない。
このタイミングだからクラピカも行動に移したのかもしれない。
わたし達はもうすぐ裏社会に身を落とす。
真っ当とは言えないグレーゾーンな取り引きを交わすようになり、平和とは程遠い抗争社会に染まって生きる。
いつ死ぬか分からない。
というよりも、きっといつか死ぬだろう。
それは悲願を達成した後かもしれないし、前かもしれないし、同時かもしれない。
それでも良いから一緒にいたい。共に戦って死にたかった。
クラピカの与える刺激に身体が熱くなる。
繰り返されるそれに身体が勝手に反応する。
気持ちよくて頭がおかしくなりそうだった。
「あ、あっ、クラピカ……!」
「ナナミ、――――!」
(なんて言ってるの?)
わたしと同じようにクラピカにも余裕がないのだろう。
時どき言葉が共通語じゃないものになっていた。クルタ族の言葉だろう。
わからないなりに同意して、言葉の代わりに態度で示す。
抱きしめて、キスをして、繋がった場所から快楽を供に味わった。
求め合う行為はまるで原始に返ったような、本能的な行動で。伝え合うのは簡単だった。
貪り合ったあとに訪れた眠りはとても穏やかで、心地よい疲労とともに満ち足りたものだった。
まだ何にも染まる前のありのままの二人で、悩みも不安もない、こんなにも平和で幸せな時間を過ごせるのは、きっと今夜が最初で最後になるだろう。
隣で眠るクラピカの寝顔を眺めながら、そんなことを考えた。
これから先、たとえ刹那的にしか愛し合えなくなったとしても……
それでも貴方を愛してる
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