五日後―――
今日も朝起きてスグに声が出せるかどうか、布団の中で試してみた。
『ーー ーー ーーーッ』
(あーあーあーー!)
――やっぱり駄目か……空気の音だけするって、なんか面白いな――
わたしは、突然声が出せなくなってしまったというのに平常心を保っていた。
過去に飛ばされて100年以上も昔に居るらしくて……
おまけに声が出なくなっちゃって……
最近のわたしって有り得ないような珍しい経験ばっかりしてるけど、
どっちかっていうと周りのみんなの方が動揺してたり
騒ぎ立てたりしながらも、凄く気にかけてくれてて……
声が出なくなった初日、
一際大騒ぎした龍馬さんは、いかにも怪し気な漢方みたいな薬を勧めてくるようになって、
慎ちゃんは 危ないから絶対に一人で外に出ない方がいいと言って付き添い宣言するし、
以蔵なんか 野花を摘んできて部屋に飾ってくれたりしたから……かなり驚いた。
気遣いは嬉しいんだけど、なんだかな・・・
―――今のわたしって、前以上に役立たずの厄介者だよね。
……なんで、過去に来ちゃったのかな?
……声まで失って、どうしてわたしなのかな?
これからどうしよう……
そういえば、宿の人も対応が変わったのに
武市さんだけは前と何も変わらないな・・・――――
武市さんにしたら、当たり前な反応なのかもしれないけど……
その冷静さが今はやたらに有り難かった。
もしかしたら、その態度が私をこうも落ち着かせてくれているのかもしれない。
―――やっぱり、しゃべれないって不便だよなぁ……
この時代の文字も書けないし。
声だけでも早く元に戻らないかなぁ……――――
焦るでもなく、そんな風に考えられるわたしが居た。
*
三日前―――――
「ほいで?医者はなんと言うたがや?」
「高熱は偶発的なもので、精神的な過重が原因だろうと……」
「するとあれか、未来からこの時代に迷い込んじょるが原因か……のぅ武市?」
「・・・推そらくは、そういうことだろう」
「声まで失うて、まっこと難儀なことよのぅ……じゃが、ちひろはそげな境遇をちくとも感じさせん。それが、わしには信じられんのじゃ……」
「・・・・・」
「わしらにできる事は、未来へ帰る方法を探すことだけかのぅ……」
「そうだな。声に関しては、あまり騒ぎ立てない方が良いのだろう……」
―――本当に、僕らが彼女にしてやれる事は……
”そっとしておいてやること” それ以外に何もないのだろうか――――
2010/11/19
眠気MAX…中途半端ですがここで区切ります。
しかし土佐弁むつかしい…間違いだらけかもしれません。ちゃんと龍馬さんだと伝わりますでしょうか?17/64