かをり(桂祭り2012)小話付き

2012/06/28 02:10

かをり(桂祭り2012)小話付き

かをり



あれは、何という名前だっただろう――


聞き慣れない響きを持ち
それでも優しく耳に届いた時の、穏やかな幸福感がいつまでも私の内に残っている……

深く、深く、日毎にそれは広がって 柔らかに。

ふとした瞬間、まるで空気のように
辺りを埋め尽くしてしまう……


君だけが知っている――

その花の姿――

その花の香り――


知っているのは君だけなのに……不思議だね。

いつの間にか私の周りを香りが包み、目を凝らせば姿が浮かび、手を伸ばせばほら……
触れることも出来るようになった。


私はまだ、君には触れられないけれど。
それでもきっと少しずつ、少しずつ……近づいているのだろうなと、そう思う。



この香はまるで――

この花はまるで――

君そのもののようだ――




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