「ねえシャル、ネズミーランドって知ってる?」
「あーうん、行ったことあるよ」
「あるの!どんなところ?楽しい?かわいい?」
「たのしいし、かわいいよ」
「へえええ!」
「旅団じゃそういうの行かないし行ったことなかったよね。なに、行きたいの?」

俺が顔を覗きこむとナマエは煮えきらない返事をよこした。

「え?…やっ、べ、べつに…」
「あ!わかった。俺とふたりで行きたいんだ?」

ニヤニヤ問いつめるとナマエは顔を赤くしてそっぽを向いた。

「ち、ちがうし!」
「図星だ。照れちゃって」
「照れてないし、ネズミーランドなんてべつに行きたくないし!」

そう話したのが2日前で、俺は今2枚のチケットを手にしてる。

「知り合いがゆずってくれたんだよね。たまたま使わなくなったからって」
「…へ、へえ」
「行く?俺とふたりで」
「行く行く行きたい!」

とたんに目を輝かせるナマエを見て、やっぱり行きたかったんじゃんと内心苦笑しながら、俺はその顔が見たかったんだなと腑に落ちる。
それにしてもナマエが鈍くて助かった。だってちょっと考えたらわかるはずだ。俺の周りにいるのは拷問にしか興味ないやつとか筋肉のことしか頭にないやつとかお宝しか眼中にないのとかそんなのばかりで、ネズミーランドなんて平和で愉快な国のチケットをゆずってくれるような知り合いなんかいないってことくらい。だからこの2枚のチケットは俺が全情報網を使いこなして1日でもはやく行けるように奔走して手に入れた努力の結晶だったりする。こんなダサい真相は死んでもナマエには言わないけれど。
160616
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