「イルミ、遊園地行こう!」
「やだよ。めんどくさい」
二言目にはこれだ。取り付く島もあったものではない。
いつもならこれで諦めてしまうところだけど、今日の私には切り札がある。
「イルミが誕生日何がいいかって聞いたとき、仕事ない日まで待つからイルミの一日を頂戴って言ったの覚えてる?」
「…そういえば、あったねそんな話」
「そんなのでいいのって言ってたよね」
「言ったけど」
「イルミ、自分の言葉には責任を持たなきゃね」
とどめの言葉を言い放つと、観念したようにイルミは目をふせた。
「…好きにしなよ」
やった!
久しぶりにイルミとデート。しかも遊園地に連れて行くことに成功。楽しくなるに違いない。
真顔でジェットコースターに乗るイルミ。
真顔でメリーゴーランドに乗るイルミ。
真顔でお化け屋敷を出るイルミ。
うん、なんだかんだ言ってイルミも楽しそうだ。
「なんか激しく誤解してない?」
さんざん遊び倒して夜になった後、マンションまで送ってくれたイルミはシャワーを借りていくと言った。
すっかり寝る体勢をととのえた私はベッドの淵に座り、両足をぶらぶらと揺らしていた。
「そういえばイルミ、この間仕事で大ケガしたらしいね」
「誰に聞いたの、それ」
シャワーを浴びて上半身裸のイルミのお腹には、生々しい傷あとがあった。
「ミルキが言ってたよ。ろくに治療も受けてないんだって?」
「大した傷じゃなかったし」
「お腹に穴開いたら大した傷だと思うけど」
「そ?」
「そうだよ。我慢は体に良くないよ」
イルミは自己治癒力を過大評価しすぎだ。いくら化け物じみた回復力を持っているからといって、さすがにちょっと心配になってしまう。
「本当にそう思う?」
首をかしげて問うイルミに向かって強く頷いた。
「もちろん!」
「そう。じゃあ遠慮なく」
「…ちょっと、何で押し倒してんの」
「我慢は体に良くないんでしょ」
「そ、そういう意味じゃな…」
慌てる私に、イルミはとどめの一言。
「ナマエ、自分の言葉には責任を持たなきゃね」
「……」
朝とはまるで逆の立場だ。
うーん、やり返された。
好きにしなよ、とはさすがに言えないけど。