「…ねえねえヒソカ」
耳元に小さくひそめられた声がかかる。
僕はナマエが何かを伝えようと間近で口を寄せているのに気づくが早いか、わざと笑顔でそっちへ向き直った。
「なんだい?」
思った通り至近距離で目が合う。ナマエは驚いた顔をしている。
「…なんでもない」
そう言って照れたようにぱっと顔を背けた。頬から何から赤く色づいた横顔。それが僕の加虐心に火をつけた。
いじめてくれと言ってるようなものじゃないか。
赤くなった耳を甘噛みしてやるとナマエはさらに真っ赤になって飛びのいた。
「どうかしたかい?」
我ながらしらじらしくたずねれば、耳をおさえながら何か言いたげに口をパクパク開けたり閉じたりしている。
期待以上のあわてぶりだ。これだからナマエにいたずらするのはやめられない。
最終的にナマエはくるりと背を向けて脱兎のごとく逃げ出した。僕は満面の笑みでひらひらと手を振りその背中を見送る。
ないしょばなし
(さて追いかけてみようか)
20150606