2ついていっちゃいけません
さかのぼること十時間。
なまえが家出を決行したのは真夜中だった。うまいこと団員に気づかれずホームを抜けられたのはクロロが仕込んできた修業のたまものだ。
遠く知らない街の公園で、なまえはクマのぬいぐるみを抱きながら一人ブランコをこいでいた。街灯はぼんやりと頼りなくあたりは暗い。
ジャリ。砂を踏む音がした。街灯の少し手前に男が立っている。
「どうしたの?こんな時間にひとりで。お父さんとお母さんは?」
近づいて話しかけてくる。逆光で顔がよく見えない。なまえはブランコを止めると物怖じせずにこたえた。
「家出をしたの」
「家出?それはすごいねえ」
男はなまえのところまでやって来てかがむと目線をあわせた。
「名前はなんていうの?」
「なまえ」
「じゃあなまえ、一緒に行こうか」
月明かりに照らされた男の顔はやさしそうに笑っていた。なまえは首をかしげてたずねる。
「…どこに?」
「なまえみたいな子がたくさんいるところ」
男はさらに親切そうな笑みを浮かべる。
「みんな家出したの?」
「そうだよ」
男がうなずくとなまえはがぜん乗り気になって立ち上がった。
「じゃあいく」
知らない人について行っちゃいけません
(残念なことになまえは生まれてこのかた誰からもそう教わらなかった。知らない人を倒す方法は何から何まで教わっているが)