ホームシック・ナポリタン | ナノ


ソファで仰向けになっていた俺の上へなまえが乗っかってくる。本の下をくぐりぬけて視界に割り込むと小さなくちびるをぱかりと開いた。

「にらめっこしよ!」

俺がするともしないとも答えないうちからひとり勝手に歌い出す。

「わーらうーと負けよ、あっぷっぷ」

勝手にはじめたことだ、とあえて無表情を貫くとなまえも眉ひとつ動かさず真顔のままで俺を見ていた。

「……」

おかげでただひたすら見つめ合ってしまう。

「……なぜ笑わせようとしないんだ」

「フィンがおしえてくれたの。クロロに勝つにはただじっと見つめてろって」

目をそらさないよう努めてじっと俺の顔をのぞき込んだまま答える。

「………」

その視線が厄介なのはたしかだった。

「わかった。俺の負けだ」

あっさり両手を挙げて降参する。が、少々面白くない。

「やったークロロに勝ったー」

ばんざいと喜ぶなまえのあごをとらえて両頬をつまんだ。するとなまえは突き出た唇で

「にゃにしゅんにょ」

と不満そうに俺をにらむ。やり返そうとなまえが伸ばしてきた腕をつかんでソファに組み伏せた。



「きゃークロロのへんたいーー!!」

なまえが叫んだ声に何事かとシャルナーク、パクノダの二人が様子を見に来た。
なまえは笑い涙を浮かべ、じたばたと手足を振って暴れる。

「団長…あんた何歳なんですか」

たずねるシャルナークそしてパクノダの見る目が心なしか冷たい。

「十九だが?」

それがなんだと開き直って答えながら、いい加減なまえをくすぐるのはやめた。

「九歳のまちがいでーす」

解放されてソファから身体を起こしたなまえが生意気を言う。

「ほう、まだやられたいらしいな」

もう一度弱い脇腹をくすぐる。「きゃー」と甲高い叫び声がホーム中に響き渡り背後で二人のあきれる気配がした。

end.
20150515

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