ホームシック・ナポリタン | ナノ


10流星街のこども


俺が家出したなまえを見つけたのは一昨日の夜だった。夕方にホームを出て行き先を探知するのに夜までかかった。
ククルーマウンテンのふもとの公園にたどり着いた時、なまえはゾルディックの長男と話していた。

「家どこ?」

「……」

「うちの執事に送らせる」

イルミの申し出になまえは首を横に振った。

「…かえりたくない…」

その言葉はやけに静かに響く。

「あ、そう」

イルミは短く答えて少し考えていた。

「じゃあ俺の家に来る?そのスコップ直接キルアに返したらいいよ」

なまえがこっくりうなずくと、イルミはその手をとった。絶をして見ていた俺に気づかないまま、二人は手をつないで歩いて行く。
それをただ傍観していた。「ハルから何も奪うなよ」。なまえの父親の最期の言葉が俺にそうさせる。イルミが何ということも無く取ったあの小さな手を俺はまだ一度も握ったことがない。


「いらっしゃいませー」

にこやかに話しかけてくる店員の横を通り過ぎてかごを手に取る。必要なものを次々とかごに入れ、レジへ向かう。盗賊らしく奪えばいいのだがそんな気分ではなかった。
会計を終えたものを紙袋に詰める。それを抱えて外に出ると、会計のとき出した財布を見ていたのか頭の悪そうなのが三人後をついてくる。ちょうどいい。
予想どおり人気のない路地に入ると彼らはさっそく話しかけてきた。

「僕、金ある?あるよね」

月明かりの下に下品な笑顔が三つ。「僕」か。よっぽどガキだと思われているらしかった。十九はガキだろうか。

「俺たちさあ、金なくて困ってるんだ」

「そう。俺はあんた達が困っても困らない」

その言葉が合図だった。
囲まれて腹に蹴りをくらう。背中からも一発。たいした一撃じゃないにしても降りかかってくる敵意は今の自分にとって心地良かった。容赦なく顔面に向かってくる拳を今度は避けて相手の腹に二発叩き込む。もう一人が背後から殴りかかってきたのをかがんでかわす。左足で弧を描くようにしてそいつの足をすくうとバランスをくずして倒れた。隣から蹴りかかってきた三人目はその足首を掴んで、倒れ行くもう一人の方へ放った。鈍い音がして彼らは衝突しあう。
暴力をはけ口にする自分はそこはかとなく青臭い。十九はガキだと結論付ける。

買ったばかりの食糧に血が付かなくて良かった。路地に転がる三つに背を向けて歩き出す。さて、帰るか。

ホームに戻るとなぜかフィンクスがいの一番に出迎えて、そして食糧の入った紙袋を見るなりおおげさに落胆した。随分なごあいさつだ。
それから二日が過ぎ、今に至る。



「なまえのことを心配してるのは団長、貴方の方です」

窓の外にやっていた視線を彼女へ戻す。パクノダは時々俺よりも俺の心中に詳しそうなことを言う。

「そうやって外を見ていてもなまえは帰って来ませんでした」

「ああ」

パクノダは何を思ったのか俺の顔を見て苦い笑いをもらした。

「団長が、出て行ったなまえの気持ちを考えてあえて何もしなかったことも分かっています」

「……」

「…ですが、もう三日になります」

「言う通りだ。俺もこれ以上放っておくだけというつもりはない」

「…ありがとう」

そう言ってパクノダは綺麗に笑った。
「団長」ではなく流星街の仲間としての言葉に俺はまだ心地よさを感じている。
…やっぱりガキだな。自分に笑った。

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