ヒソカは目を閉じたまま寝返りをうった。
今日は仕事もないし、昼下がりまで寝こけていたって文句は言われないだろう。
気持ちよく寝…
バターン!
ダダダダダダッ
「おや」
勢いよく誰かがせまってくる音に体を起こすと、同時にタックルをおみまいされた。衝撃でベッドに逆戻り。
「どうしたんだい、一体…」
タックルをかました当人はそれには答えず、ぎゅうっと布団ごとヒソカに抱きついた。
「◆」
普段は間違っても甘えるようなタチではない名前のその行動に一瞬あっけにとられるヒソカ。
何がどうしたというのか。
怪訝に思った直後。
ピシャーン!
ゴロゴロゴロゴロ…
激しい雷鳴に腕の中の名前がびくりと肩を揺らした。閉めきりにしていたカーテンをめくると外はひどい雷雨だった。
なるほど。
「名前」
声をかけると、布団に顔を埋めたまま名前はようやく小さな声を出した。
「ち、ちがう。べつに、」
「うん」
「べ、べつに、雷がこわいとかじゃないんだからね!」
「うん」
ガタガタふるえながら言われてもね。
なんて口には出さなかった。
言ってしまったら最後、意地っ張りな彼女は二度とこんな姿を自分に見せてはくれないだろう。
実際今の名前はいつになくかわいらしかった。おびえる小動物のようで。
「おいで」
自分の上にしがみついている名前にぽんぽんと隣を叩いて示す。やさしさ半分下心半分で名前をベッドの中に招待した。
布団を持ち上げてやると、さっと隣にもぐりこんできてやはり小動物を飼っているような気分になった。次の雷に備えて耳を塞ぎ縮こまる名前。その姿に言い様のない興奮を感じたヒソカは、ありったけの愛しさを込めて名前を抱きしめた。
「…ヒソカ、くるしい」
「こわいのよりはマシだろ?」
end