いきなり壁に叩きつけられて、文字通り呼吸を奪われた。
意識が遠のく。
「私のこと殺すの?」
ようやく解放されてこう言ったら、口元の名残をぬぐっている飛影に「馬鹿か貴様は」と一蹴された。
私も彼の腰刀を見て頷く。
飛影にそんな気があれば私はとっくに死んでいる。
考えれば簡単に分かることだ。
でも、冷静になれなくても無理はないと思う。
それほど唐突なキスだった。
「…殺す気じゃないなら乱暴はよしてよ」
私が肩をすくめると、飛影は怖い顔してボソリと言った。
「貴様が、」
私が一体何をしたっていうんだ。
「……蔵馬、蔵馬とうるさいからだろうが」
確かに蔵馬のことを話題にしてはいたけれど。
え、なにそれ、やきもち?
そっぽを向いた飛影の耳が紅くて、つい声にだして笑ってしまった。
「本当に死ぬか」
低い声でこちらを向いた彼の顔面を見て、またふきだしそうになった。
けれど命が惜しいからせきをしてごまかす。
「ごめんごめん」
誠意を込めてあやまったつもりなのにすごい目つきで睨まれた。
トマトみたいな顔色だったから、ちっとも怖くなかったけれど。