第一志望とは行かないまでも希望の大学に進学を決めた。
南野は義父の会社を手伝うらしい。

「卒業おめでとう、名字」

南野とは家に呼んでテレビゲームをやる仲で、彼女ではないけどクラスメイトよりは親しかった。

卒業する、というのはたくさんの関係に区切りをつけることになる。
南野との間に築いてきたものもここでリセットされるだろう。
おそらくもう遊ぶこともない。
さびしいだなんて、笑ってしまうけど私の本心だ。

「うん。南野もね」

南野はさびしいとは思わないだろう。
誰とでも当たり障りなく付き合うけれど、所詮他人とつながることに積極的な奴ではない。
執着心など簡単に捨ててしまえるのだ。
そのことこそが、寂しかった。

「ところで名字、明日ひま?」

「え」

「そんな驚くことかな。それとも用事がある?」

「…や、ない」

「ならこの前の続き俺の家に来てしないか」

「……」

もう誘うこともできないし、誘われることもないと思っていた。こんなのは不意打ちだ。

「言ってたでしょう。今度こそ俺を負かすって。」

「……」

「名字?」

「…卒業しても、遊んでくれるんだ」

ポロリと本音がこぼれた。
こんな情けない心中は知られまいと思っていたのに。
今度は南野が少し驚いた顔をした。

「当たり前だろ」

南野の力強い声は、私の思考を根底からくつがえしてしまった。
この先嫌でも疎遠になっていくという事実がどうなるわけでもない。
けれど、南野は私が思っているほど薄情ではなかったらしい。

「…家に呼んでくれるのは初めてだよね」

「あぁ、最近ようやく落ち着いてね」

もし南野に彼女ができたら、今度こそ今の関係は跡形もなく消えるだろう。

「緊張するなー」

「安心していいよ、名字をどうこうする気は全くないから」

「…こてんぱんにされる覚悟、しといてね」

「それは怖いな」

その時には南野にだって喪失感くらい残るんだろう、私ほどじゃなくても。
それで充分だ。
だって私たちは友達だから。
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