「おはよう、マコト」
「おはよ、ミノリ」

あたしたちの住むシッポウシティにあるカフェソーコ。ミノリはここでバイトをしていた。今日はシフトが入っていないとかなんとかでここでお茶会をすることになったのだ。

「モモンジュースとオレンジュースお願い」

ミノリはその辺にいた同僚を捕まえて勝手に注文をしていた。あたしが何もいってないのにお気に入りを頼んでくれる辺りはさすが我が友である。

「で、今日は何の用だっけ」
「バイトの相談」
「あ、そうだった」

はあ、と頬杖をつくと翔が勝手にボールから出てきてミノリの座ってる椅子をつついた。

「翔、勝手に出てこないでよ…」
「翔くん今日も晴たち任せていい?」

ミノリとあたしの言葉が被る。でも翔はちゃんと聞き取れたようでミノリに向かって一声鳴いてからあたしに悪い、とでも言うように頭を下げた。それからボールから飛び出してきたミノリの手持ちたちと共にテラスの方へといってしまった。

「いつもありがとうね、翔くん」
「いや、こっちこそ」
「やっぱり晴たちも無理かあ」
「うん」

きっぱりと頷くとミノリは苦笑した。彼女もあたしのポケモン嫌いを理解してくれている一人だ。

「いい子ってのはわかるんだけどね、やっぱちょっとなあ」
「まあ無理しなくていいよ。平気になったら遊んであげて。花音は特に楽しみにしてるから」
「うん、そのうちね」

とか言っておきながらそんな気はほとんどない。ミノリもそれをわかってるのか眉を下げて笑った。
そしてそこでやっときたオレンジュースを飲む。

「で、話戻すけどバイトどうしよう」
「ここにすればいいじゃん」
「あたしに死ねと」
「そこまで言ってないでしょ」
「いや、半分死刑宣告に等しいから」

真顔で言ってやればミノリは吹き出した。ひどい。

「じゃあ…あ、待って。電話でていい?」
「どうぞ」

いきなりかかってきた電話に出たミノリは一瞬にして柔らかい表情になった。ああ、お相手は彼氏様か。確か千里さん、だっけ?
いいなあ、と考えてたら怒鳴り声が聞こえてきた。

『今すぐ!今すぐです!早く避難してください!』
「「え?」」

音源は千里さんから。状況が把握できないあたしたちはぽかんと口を開けた。
そのとき、店の入り口のベルが鳴った。

「邪魔するぞー」
「……千里さん、遅かったです」

二人の男が入ってきたかと思うと、ミノリは瞬時に状況を理解したようでため息をついて千里さんに報告した。
オールバックの男がきょろきょろしてあたしたちを見つけるとこちらに向かってくる。

「ミノリ、久しぶりだな」
「一昨日ぶりですね小暮さん、蒼刃さん」
「ちょっとお前に用があってな。おーい千里。ミノリ借りるぞーこっちは友達か?」
「そうですけど、マコトはダメですよ」
「マコトっていうのか。俺は小暮だ。よろしくな。こっちにいるのは蒼刃。無口なのは元々だから気にするな」
「小暮さん話聞いてください」
「よし、じゃあ行くぞ。店長!こいつらのお代ここに置いとくからな!」

ミノリの言葉をガン無視した小暮さんとやらはあたしとミノリのてを引っ張った。ミノリを見てやるとごめん、と片手で謝られた。どうやら、ていうかやっぱりミノリでもこの人は止めれないらしい。
ま、いいやとあたしは軽い気持ちだった。これがあたしの運命を変える出会いになるなんて知らずに。



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