「………最悪」

目が覚め、あたしはのそのそと起き上がった。あーもーなんであんな夢を見たんだか。はあ、とため息をついて時計を見るともうすぐ8時。

「時間無いし…」

はあ、とまたため息をついて部屋を出る。リビングにつくとレパルダスの翔がいた。

「おはよ、マコト」
「はよ。母さんは?」
「もう仕事行ったよ。だから朝食は俺作」

翔は自慢気にニカッと笑う。それにつられてあたしも笑った。

「今日はミノリのところに行くんだっけ?」
「正しくは職場だけどね」

椅子を引きながら答える。翔も席について「いただきます」と声をかけた。

「結局、そこのカフェでバイトするの?」
「んー、まだ悩み中。あそこよくポケモン出してるトレーナー多いし」
「…そっか」

翔は目を伏せた。彼はあたしが彼以外のポケモンが無理なことを知ってるから何も言わない。ポケモン嫌いなんていうと大抵の人は嫌な顔をしてくる。

なんで、なんでよ。なんでポケモンはいい奴ばっかり、人間が悪いみたいな考え方ばっかりなの。わけわからない。あたしなんかあのとき翔が助けてくれなかったら死んでたかもしれないのに。そんなことを言われてもあなたたちはポケモンを庇うの。
少し前まではそう考えていた。いや、今でもか。今は昔ほどポケモンに拒否反応を示さなくなっただけ。根本的なところは何も変わってない。
きっとあたしよりも大人な翔はそれをすべてわかっているのだと思う。だからいつも何も言わなかった。

「なあ、マコト」
「ん、何?」
「お前、ポケモン嫌い直す気ねえ?」
「…は?」

だからこんな問いかけは完全に予想外だったりしたのだ。



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