「ねえ、一緒に食事しない?」
「No!」

英語で迫られるがあたしはむっすりとした顔で断る。あれだけはっきり言えば男は追ってこなかった。

「はあ、あたしは男じゃないっての」

日本人女性は外国人男性にモテる。日本人男性も外国人男性にモテる。友人から聞いた話だ。
あたしははっきりいって男顔である。そして肩幅も広めで身長は170超え。さっきの男は完っ全に男を狙う目付きだった!くっそ、あたしは女だっての!

1ヵ月前ライモンのギアステーションからニンバサ支部に移動になった。慣れない英国への移動は不安だったけど英語は十分に話せたので問題はなかった。うん、なかったはずなのにね!
顔立ちが完全に男なせいでいろんな方に言い寄られるんですよ。ふざけるなし。あたしにそんな趣味はない!つーか女!もう何度そう叫びそうになったことやら。
うう…ライモンに帰りたい。クラウドさんに会いたい。ボスに会いたい。
はあ、とため息をついててくてくと一人帰路につく。ライモンと似た街並みだがやっぱり寂しい。

「失礼」
「はい?」
「この後ワタクシの家で食事でもどうですか」

肩を叩かれて振り向けばまた男。逆行で顔は見えない。つーかまたかよ。

「お断りします」
「そうおっしゃらず」
「う、わっ」

断ったにも関わらずぐい、と腕を引かれる。おいおいこんなにしつこいのは初めてだぞ。

「離してください!」
「大丈夫です、ワタクシの家はすぐそこですから」

離そうと試みるががっちり捕まれた腕はほどけそうにない。当たり前だがあたしが男の力に勝てるわけなくあっさり引きずられていった。



***



「どうぞ」
「…お邪魔します」

中へとエスコートされて断ることもできずおずおずと部屋にはいる。

「そこの椅子にに座っていてください」

そう言って椅子を引かれたので遠慮なく座る。その時初めて顔が見えたが、それはノボリボスそっくりだった。

「口に合えばいいですが」

もう用意してあったのか男は料理を出してきた。それはもう本当すごい豪華で思わず手をつけそうになる。

「遠慮なさらず。何も盛ってはいませんよ」
「…なら、いただきます」

ボスにそっくりなむっすりとした顔で促され、おずおずと箸を延ばした。ぱくり、と一口。

「…おいしい」
「それはよかった。ではこちらもどうぞ」
「あ、どうも」

差し出された赤ワイン。きっと高いやつだろう。絶対高いやつだ。
しかしあたしのような庶民には高い安いの味の違いなんて対してわからないので、とりあえず一口含んだ。…………うん、赤ワインの味だ。

「お口に合いましたか」
「ええ……っ!」

ぐらり、と視界が歪む。
え、なにこれ。ヤバイ。
もう無理、と意識を手放すとき名前を呼ばれた気がした。



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