「う…」

頭がいたい、ガンガンする。
呻き声をあげながら頭を押さえていると上から「大丈夫ですか」と声が降ってきた。

「…………!?」
「ああ、ちゃんと目が覚めたみたいですね」

おはようございます、とボスそっくりな男があたしに馬乗りになって…えええええ!?

「ちょ、何する気ですか!」
「何と言われましてもこの状況ですることなどひとつしかないでしょう」
「やめろ!あたしに薔薇の気はない!ていうか女!」
「そんなこと存じておりますよ」

…………え?
まて、この人、今なんて…?

「上司の顔もわかりませんか?それともノボリ様と勘違いされましたか?」

くつくつ、と目の前の男はおかしそうに笑う。
え、上司?え、あ………もしかして。

「インゴボス?」
「ご名答」

そう言えばニンバサにもサブウェイボスがいてインゴボスとエメットボスという方がいた。いやでもまさかご本人とは。ていうかまともに話したの初めてだ。この会話がまともかと聞かれたらあれだけど。
フッとインゴボスは笑うとあたしの頬を撫でる。

「いくら男らしい容姿とはいえ、女かどうかなんてことは分かりますよ。可愛らしい部下であるのなら尚更」
「え、あの」
「それにしてもワイン一口で倒れるとは予想外でしたよ。もっと度数の高いものも用意してたんですけどね」
「は」

するとインゴボスはチュ、とリップ音をたてて頬にキスをした。おう英国式挨拶ですか。挨拶ですよね、ね。

「ああ、安心してください。ノボリ様にはワタクシがもらうとちゃんと連絡を入れてありますから」
「え、なにを?」
「もちろん貴女に決まっているでしょう、なまえ」
「は!?」

ニィ、とインゴボスの顔が妖しく歪む。いやいやいや、まてまてまて。

「あたしの意見は無視ですか」
「何も言われた覚えはありませんが?」
「じゃあ言いますどいてください」
「お断りします」

断ったインゴボスの顔がどんどん近づいてくる。ちょ、これはマズイって。

「ワタクシのものになりなさい、なまえ」

そっと顎を掴み囁く。腰に響くような低く、甘い声。でも。

「ふ、ざけるなよ変態上司いいいいいいい!!」

そんな台詞にときめくわけなくあたしは思いきり頭突きをかましてやった。



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