昼休み。
一緒に昼食をとらせようと無理矢理屋上に連れていこうとした丸井を蹴りだし、本を読みながらとある人物を待っていた。
「椿せんぱーーい!!」
椿は自分を呼ぶ声に本から顔をあげ、声の聞こえた廊下の方を見た。
教室の入り口には小さめの女生徒がたっていた。
「先輩、お弁当食べにいきましょう!!」
「絢音、少し待っていてくれ。本を片付ける」
「はーい」
女生徒の名前は宮下絢音。
椿年下にも知り合いの多い椿が特に可愛がっている一つ下の後輩で切原の幼馴染みである。
「待たせたな絢音。行こうか」
「はい!!」
向かう先は屋上である。
バン、と勢いよく扉を開ければ円になって座りながら弁当を食べていたテニス部がいた。
結構大きな音がしたようで彼らは驚いてこちらを凝視した。
「あ、椿!!俺が誘っても来なかったのになんで今来てんだよ!!」
「黙れ豚。絢音を待っていたんだ」
「絢音…?」
椿の言葉に反応したのは切原だった。
「赤也その卵焼きちょーだい!!」
「あ、コラ!!勝手にとるな!!」
「やっぱおばさんの卵焼き最高」
「話聞けよテメエ」
後輩二人は周りを無視してやり取りを繰り広げている。
絢音が切原の弁当のおかずを盗むのは日常茶飯事で3年の面子は微笑ましく二人を見守る。
二人は生まれた頃からの幼馴染みで、とても仲がいい。
そして互いが互いを好いている。
だが二人はそれに気づかない。
よくある幼馴染みのすれ違いの恋愛話のようだ。
「別にいいじゃん。ねえ椿先輩」
「ああそうだな。赤也、女の子には優しくしないと嫌われるぞ」
「ちょ、椿先輩まで!!」
「ははははは」
笑いながらもじゃもじゃなワカメ頭を撫で回してやる。
ぐしゃぐしゃになる!!と切原が泣き言を言っていたのを絢音が笑った。
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