「よこせ。さぁよこせ」
「断る」
「んでだよぃ!?昨日勝ったのは俺だろ!!」
3-B教室の椿の席。
椿と丸井はいつものように言い争っている。
と言っても丸井が一方的にけしかけているだけなのだが。
「おーおー。今日もやっとる」
朝練がなく、遅めの登校をしてきて仁王が苦笑しながら近づいてきた。
「今日はなんじゃ?」
「俺が椿を捕まえたら菓子作ってくる」
「ああ、それで昨日走りまわっとったんか」
昨日。
HRが終わると同時に丸井は椿に鬼ごっこで椿が丸井につかまったら丸井にお菓子を作ってくるという勝負を持ちかけ、椿が了承する前に鬼ごっこを開始したのだ。
椿は20分近く逃げ回ったのだが、
20分間フルで全力疾走していたので体力切れで捕まってしまったのだ。
「そもそも私は勝負の参加を了承していない。
なのに捕まえられて菓子を作れだ?
横暴すぎるだろう。
私が菓子を作る義理など無い」
椿は本を読みながら淡々と話した。
「でも拒否もしなかっただろ。
それに結局は逃げたんだし。
やる気ねえなら逃げなきゃいいだろ」
「まぁ、ブン太の言い分も一理あるの」
「……」
椿は本から顔をあげ、小さくため息をつくと机の中をあさった。
そして取り出したのは小さな包み。
「これでいいか」
丸井にその包みを手渡すとまた本に顔を戻した。
「なんだ、コレ」
「開ければわかる」
仁王と丸井は興味津々に包みを開けた。
「これ……」
中に入っていたのはあんこが中に入った白い大福だった。
「私が食べるつもりだったんだ。いらないのなら返せ」
椿は淡々と話すがその顔は少し赤い。
「いや、貰うぜぃ♪」
丸井はお菓子が貰えてかなり上機嫌のようだ。
椿の顔が赤いのには気づいている様子はない。
ただ、仁王は気づいていたようで。
「ほう…面白いことになりそうじゃの」
静かに妖しく笑っていたが、二人は気がつかない。
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