ピンポーン…

「出ないし…」

部屋着に着替えてコンタクトを外して眼鏡に変えて。超ラフな格好で再びお隣の仁王家を訪れたが、全く出る様子がない。うむ、どうしよう。

「あら、雛乃ちゃんじゃない」
「あ、仁王さん、こんばんは」

買い物袋を下げたおばさんは仁王のお母さんだ。あたし、仁王さんのことは知ってたんだよね。……なんで仁王のこと気づかなかったんだろ。

「うちに何か用事?」
「あの、雅治くんにちょっと連絡があって…。ちゃんと確認しなきゃいけないことだから顔見て伝えたいんですけどまだ帰ってないみたいで」

へら、と困ったように笑うと仁王さんは「おかしいわねえ」と首をかしげた。

「いつもならもう帰ってきてるはずなのよ」
「じゃあ部活長引いてるかもしれませんね」
「……いや、きっと部屋でゲームしてるわ」
「へ?」
「あの子の部屋防音だからゲームに集中してるとインターホンに気づかないのよ。雛乃ちゃん、入って頂戴。もしいなかったら雅治の部屋で待ってればいいわ」
「あ、はい。ありがとうございます…」

おっしゃ、侵入成功!しおらしくしてみて正解だったね。なんて思ったけど仁王さんが「ゲームばっかりしないで勉強しなさいって言ったのに」とか「これ以上成績が下がったら没収ね」とか呟いてるからあたしは軽い恐怖を覚えた…。

「ここよー雅治の部屋は」

にこ、と笑った仁王さんは次にはきゅっと顔を引き締めてドアを開けた。

「雅治!」
「ぅおあ!」
「あんた雛乃ちゃんがわざわざ連絡回しに来てくれたそうよ。いつもインターホンには気をつけなさいって言ってるでしょ!ほら、雛乃ちゃんどうぞ。待たせちゃったお詫びに少しお菓子持って来るわね」
「え、あの」

仁王さんは強引にあたしを仁王の部屋に押し込めると「ちょっと待っててね」と言ってどっかに行ってしまった。仕方なくあたしは部屋の主を睨んでやると仁王は気まずそうに顔をそらした。手には電源の入った3DSがあって、あきらかにプレイ中だった。

「…仁王、ポッキーは?」
「…んなもん知らん」
「約束」
「しとらんぜよ」
「…でもあるって言ったじゃんか」
「………ない」
「は?」
「…あれ、嘘じゃき」

ワッツセイドゥーユーミーン?は、こいつ何言った?ポッキー無いって?

「お前、ふざけんなよ」
「ヒッ!」

あからさまにあたしは怒りのオーラを纏ってどすの利いた声で凄むと仁王は体を縮こまらせた。あ、なんかヘタレっぽくてかわいい……じゃなくて。

「このあたしに、嘘ついたってか?しかもお菓子に関してで?」
「あ、あの…」
「食べ物の恨みは恐ろしいって言葉を仁王君は知らないのかなあ〜?」
「あの、井上さん…」
「明後日、覚えとけよ」
「ヒィッ!」

ふん、と完全にビビった仁王を鼻で笑って部屋を出る。ちょうど仁王さんがお菓子(notポッキー)を持ってきたのでそれだけ受け取ってあたしは仁王家を出た。とりあえず仁王には家帰ったらメールしておこう。


to :フォーク@白薔薇
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明日の実況、スマブラにしよ
つかスマブラにしろ


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これを送ってすぐに『了解です』と返事が帰ってきた。



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