「仁王なんか歌う?」
「……俺が音楽嫌いなの知ってて言うとるんか」
「あ、忘れてた」

そういえばこいつ音楽の授業サボリ常習犯だ。

「それより喋らんか。色々聞きたいことあるぜよ」
「あたしも」

しかし先に水分補給といってあたしはオレンジジュースを飲む。ん、うまい。

「なんで天下の立海男子テニス部レギュラー詐欺師様がイケボ実況者だし」
「なんじゃ、俺が実況やったら悪いんか」
「違うし。羨ましいんじゃこら」

あたしも実況やってみたいんだよー、と心の中で付け足す。うちは機材がないのでやれないのです。パソコンも自分専用のないんです。ねだっても買ってもらえませんでした。

「やれる環境ないんじゃったか?」
「うん。バイオとかモンハンとかホラゲとかやりたいんだけどさあ」
「……なあ」
「ん、何?」
「前々から思っとったんじゃけど、お前さんの趣味ってどうよ」
「う、うるさい!別に女子がアクション系好きでもいいじゃんか!!」
「ドサイドン可愛いとか」
「……ポケモンはみんな可愛いの!」
「ナットレイのことボロクソ言ってたくせに?」
「う…」

だって!だってあれはダメだよ!たしかにナットレイは強いさ。厳選して育成すれば愛着沸きまくりだろうよ。パーティーに入れたら安心感ハンパないだろうよ。でもナットレイはあたしの敵だもん。岩タイプ使いのあたしにとっちゃ敵だもん!敵を可愛いなんて言えるか!
そう捲し立てると仁王ははいはいとあたしの話を流した。お前がふったんだろうがちくしょうめ。

「そんな怖い目するんじゃなか」
「全然怖がってないくせに」
「はいはい、俺が悪かったぜよ。お詫びに今度一緒に実況やらしてやるから機嫌治しんしゃい」
「本当!?実況いいの!?」
「(食いつきすぎじゃろ)おう」
「やったあー!」

やったやった実況やれる!仁王って案外良い奴じゃん。怖いイメージが強かったけど見直した。

「え、じゃあいつやるの?てか家どこ?」
「そう焦るんじゃなか。やるなら準備いるし、部活ないときがええから……来週の日曜かの」
「今からやりたい」
「我慢しんしゃい。あと家はさっきの駅から3つ行ったとこの駅の徒歩5分のマンション」
「ちょっと待て。あたしもそこの気がする」
「気がするってなんじゃ」
「いや、方面違ってたらわかんないし…。マンションの名前は?」
「リリアン」
「はいビンゴ」
「まじでか」

いやはや世間ってホント狭い。フォークさんが仁王でその仁王がうちと同じマンションだったなんて。つーかなんで同じ学校に通ってて同じマンションて気づかなかったんだろ?

「俺は朝練あったしのー。帰りも遅いから会わんのじゃな」
「読心術やめれ」
「ばりばり顔に書いてあるんじゃ」

その後、あたし一人のリサイタルをやって仁王はずっと聴いてるだけだった(仁王ってイケボだし絶対歌上手そうなのに)。そんで解散してバラバラに帰宅。同じ電車から出てきて同じマンションに帰っていくのを見られたら私死亡フラグ即回収されます。



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