ただいま4限目が終わりこれからお昼と言うとき、教室はざわついた。何でかって言うと。

「ほら井上、行くぜよ」
「んー」
「え、井上さんって仁王くんと仲良かったの?」
「丸井くんもいるのに二股?」
「ちょっと井上さん!説明してよ!」
「え…?」

というわけである。仁王が人目も憚らず弁当を持ってきてあたしを呼びに来たのだ。
こいつ端から見ればただのリア充なんだよね!イケメンなんだよね!つーかあたしは丸井とはできてねーし。ただの友達だ二股言うな。
とりあえずどう嘘つこうと考えていると(柳生くんと仁王とお昼です☆なんて口が避けても言えねーよ)、仁王がぽんとあたしの頭に手をのせた。

「先生に頼まれて柳生と一緒にこいつのカテキョじゃ。こいつ数学と英語悲惨じゃからのう」
「う…」

仁王の言葉にぐうの音も出ない。
いや、確かに数学も英語も悲惨だけどこんな嘘言わなくても…。しかもご丁寧に柳生くんのことも言ってるし。
しかしそんなあたしの心情とは裏腹に詰め寄ってきた女の子達は「ああ…」と納得したように呟いた。うん、あたしの数学と英語の酷さはみんな知ってるもんね!

「つーわけで行くぜよ。あんまり柳生待たせるのもよくないけえ」

じゃあの、と仁王は女の子達に手を振ってあたしの手をとった。



***



「遅かったですね」
「ごめんね」
「クラスの女子共に捕まっとったんじゃ」
「それなら仕方ありません。井上さん、大丈夫でしたか」
「うん」

柳生くんはそのときの様子が簡単に浮かんだらしい。流石はテニス部。こんなことはよくあるんだろうね。

「で、一個聞きたいんだけどさ」
「なんじゃ?」
「何ですか?」
「なんであたしはテニス部部室にいるのかな」

教室を抜け出したあと仁王に引っ張られてきたのは男子テニス部の部室だった。有無を言わされず中に入れられると柳生くんがすでに床でお弁当を広げていたのだ。

「じゃってなあ」
「作戦会議に使うのはいつも部室ですからね」
「でもあたし部外者…」
「別に問題ないじゃろ」
「井上さんが一人でここにいるわけではありませんしね」

本当にいいのかそれで。なんか部室は関係者以外は云々みたいな校則あったぞ。

「まあそれより飯食うぜよ。腹減ったなり」
「そう言いながら弁当の量少ないよね」
「少食なんよ」
「いくら少食でも少なすぎます。運動部の男子が食べる量じゃありませんよ」

そう叱咤する柳生くんのお弁当の量は結構ある。
柳生くんも少食なイメージがあったけどやっぱり量は食べるんだ。まあ仁王みたいに少なくて足りるわけないよね。

「つーか俺じゃなくて井上にも言えるじゃろ。弁当箱ちっさすぎじゃ」
「そうですね。いくら女性とは言えどももう少し食べませんと」
「えー…。だって痩せたいんだもん」

ぷにぷにのたるたるだもん。そう言えば二人はカッと目を見開いた。

「どこが!どこがぷにぷにのたるたるですか!細すぎでしょう!」
「これ以上痩せてどうするんじゃ!俺が言えたことじゃないけどおまん、栄養失調なるぜよ!」
「井上さんウエストいくつですか!絶対数値低いでしょう!」
「寧ろもっと太りんしゃい!そんな細くてどうするんじゃ!」
「なんで女性というものはそんなに痩せたがるんですか!」
「あーもー!つぶやいたーで拡散希望つけたる!」
「私も協力します。これ以上細くても困ります」
「あの、ちょっと…」

おいおいおい。なんかキャラ崩壊が二人いるぞ。なんで痩せたい発言がこんなに反対されるんだよ。
二人に気づかれないようにむに、と自分のお腹の肉をつまんでため息をつく。うん、痩せたい。
しかし、柳生くんは目敏く、キッとあたしを睨み付け、手を取った。

「それは皮でしょう!皮までなくして骨だけになるつもりですか!」
「え、ちょ、」
「自分の皮をつまんで落ち込むくらいなら触らないでください!」
「ええー」

マミー柳生くんが怖いよー。なんか目がガチだよー。仁王も真顔でケータイ打ってるし…。
ええー…。



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