ただいま3人で円卓を囲んで座っております。柳生さんが近いです。緊張してます。

「そんなに固くならないでください」
「でも…」
「中学のときはずっとクラスいっしょだったじゃないですか」
「そうだけど…」
「え、初耳」

驚いてる仁王は無視だ無視。
柳生くんと同じクラスだったって言ってもあたしはほとんど喋ったことがない。今のように緊張して話しかけに行くことなんかできなかったのだ。

「仕方ないですね。…………仁王くん」
「ん、なんじゃ?」
「少しだけ席をはずしてください」
「…ここの主は俺なんじゃが」
「では、私たちはリビングで話せと?家族の共用スペースで?」
「…わかったぜよ」

はあ、と仁王はため息をついて立ち上がった。
え、ちょ、待って!なんで出てけって言われた理由聞かないの!?なんでそんなあっさり出てくの!?

「逃がしませんよ」

仁王を追うように立ち上がろうとすればがしり、と柳生くんに腕をとられた。
う、うわあああああ!柳生くんに触られたあああ!風呂入れないじゃん!←
ギャー、と顔を真っ赤にするあたしをガン無視して仁王は部屋を出ていきました(泣)

「や、柳生くん…離して…」
「はい。すみません、いきなり掴んで」
「いえ、大丈夫です…」

眉を下げて笑う姿も素敵です!……じゃなくて!

「なんで仁王を追い出したの」
「ああ、彼には少しきつい話をしようと思いまして」
「?」
「井上さん、貴方は一次創作のサイトを運営してますよね?」
「!な、ぜそれを…」

知ってるの!
ちょ、あたしは確かに一次創作のサイトやってますよ、ええ。でも、でもね!………………内容がほとんどBLものでして。あ、NLも書いてるよ!少ないけどGLも…ってこれはどっちかっつ言えばBLと同じか。腐ってないと読めないか。苦手な人は苦手だもんね。…話ずれた。とにかく!なんでそんな内容のものを柳生くんが…

「すみません、腐ってるので」
「え?」
「全部口に出てましたよ。あと井上さんの書いた小説は全て読破してます」

にこりと柳生くんは笑った。
しかし、待て。この紳士は今とんでもない発言したぞ。

「え、柳生くんってまさかの腐男子…?」
「ええ。……そこで井上さん、一つお願いがあるのですが」
「ん?」

柳生くんは少し目を泳がせて一つ咳払いをし、すっと右手を差し出した。

「握手、してください!」
「なんで!?」
「ずっとひよこさんのファンだったんです!この業界に足を踏み入れたきっかけでもありますし…」

マ ジ か
え、これってナイフさんがあたしのファンだったってこと!?あのナイフ氏が!?

「こちらこそ握手してください!」

感激のあまりあたしはがしっと柳生くんの手を両手で握った。柳生くんは一瞬びっくりしたようだがすぐに左手を重ねてきた。

「あたしもずっとナイフさん好きだったんです!」
「本当ですか!」
「うん!あ、ちょっと待ってこれ夢?覚めたら柳生くんリア充でしたってオチ?」
「夢じゃありません現実です。ああ、ひよこさんが目の前にいる…!」

柳生くんは最初の真摯さはどこへやら。もう目をキラキラさせて顔は少し赤らんでいた。でもそんな顔も素敵。

「な、ナイフさん!つぶやいたーフォローさせてください!」
「こちらこそお願いします!私もサイトを運営してれば相互できましたのに…!」
「ならブログのリンク張らせてください!あたしのブログはあまり腐関係話してないからリスナーさんが流れてきても平気です!」
「是非!是非お願いします!」

うわあ、すごい!すごいよ!ナイフさんが相互してくれるって!あのナイフさんが!ネット上でだったらあたしチキって相互の申し込みなんかできなかったよ!オフ会(?)って最っ高!

「ああ、でもあたしの小説全部読んでくれてるなんて…!」
「結構初めの頃からストーカーしてました」
「なんですと!」
「最初はNLしか読んでませんでしたが興味本意で他のも読み始めまして…。私、ひよこさんに巡り会わなかったら人生の9割9分損してましたよ!」
「そんなにあたしが柳生くんの人生占めてたなんて…!あたしこそナイフさんのこと知らなかったら全人生真っ暗でしたよ!ナイフさんの歌ってみたヤバイです!超イケボ!」
「ひよこさんが私の動画を見てくださってる…?嬉しいですけど恥ずかしくて穴があったら入りたい…」
「なんでですか!ナイフさんの動画は最高ですよ!」
「……………お前さんら、なにやっとるんじゃ」
「「あ」」

手を繋いだまま扉の方を見れば仁王が立っていた。どうやら話が長いと様子を見に来たらしい。
とりあえず柳生くんが(腐関係を除いて)今までの流れを説明した。

「んじゃ、感動の出会いの中悪いがそろそろ柳生は帰りんしゃい」
「「なぜ」」
「もう8時半回るぜよ。井上はともかく柳生は電車使って帰らないかん。あんま遅いと親御さんが心配するしの」
「……それなら、仕方ないよね。柳生くん、また明日」
「ええ。あと井上さん、明日のお昼一緒に食べませんか?」
「え?テニス部ってみんなで食べてるんでしょ?抜けてくるの?」
「はい。仁王くんとの作戦会議と称せば問題ありません」
「…俺も巻き添えなんか」
「ええ。ですから井上さんのこと連れてきてくださいね」
「わかったぜよ」

では、と柳生くんは仁王家を出ていった。
あたしの意見は聞かないのね。いや、聞かれたところでYESorはいでしか答えませんけど。

「あんなご機嫌の柳生は始めてみたなり…」
「ん?なんか言った?」
「…ただの独り言じゃ。井上もはよ帰りんしゃい」
「うい。おやすみー」

すぐ隣の家に戻って部屋に直行しつぶやいたーを開いたらすでにナイフさんからフォローされてました。ブログも然り。柳生くん、行動早い。



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