「疲れた〜」

ポッドはドカッと園内のベンチに座った。あたしもその隣に座る。

「そりゃあれだけ走り回ったらね…」

ジェットコースターに乗った後、お化け屋敷、コーヒーカップ、また別のジェットコースター。走り回って走り回ってやっと休憩をとることにしたのです。

「なんか飲む?自販機で買ってくるよ」
「あー…じゃあサイコソーダで」
「了解」

ポッドから小銭を受け取って自販機を目指す。あたしは何飲もうかな。

「え、売り切れ?」

しかし残念なことにサイコソーダ、ミックスオレは売り切れ。おいしいみずしか残っていなかった。

「…まあいいか!」

何にもないよりはいいよね、と自己完結しておいしいみずを2本買う。ペットボトルはひんやりしていて気持ちよかったので自分の分を頬に当てた。

「ただいま、ポッド…っていないし」

戻ったベンチにはポッドはいない。しかし彼のナップサックだけはあった。中を探ると財布もある。不用心すぎないか。
ライブキャスターは入っていなかったので恐らく持っていったのだろう。そう推測をたてて自分のライブキャスターを取り出してポッドにかけた。

「もしもしポッド?今どこよ」
「「あ、わり。そのベンチからえーと…北!北に来てくれねえか?」」
「北ね。そこにいるの?」
「「おう。後、俺の鞄も」」
「はいはい。今行くから」

ピッ、とライブキャスターを切る。
なんか、ポッドの雰囲気がおかしかった。妙に焦ってる感じだった。何もないといいんだけど。
あたしも少し不安になって駆け足でポッドを探す。するとほんの少し離れたところにポッドはいた。

「ポッド…?」
「ミノリ、来たか。お前水持ってねえ?」
「水ならおいしいみずあるよ。これしか売ってなかった」
「くれ。あと俺の鞄からタオル出して」
「……ねえ、ポッド。なにがあったの」

やっぱりポッドの様子が変だ。気になって尋ねたら、ポッドは苦虫を噛み潰したような顔をして茂みを指した。

「こいつ。ひでー怪我してるみたいなんだよ」
「…チラーミィ?」
「ああ」

ひょこっ、と茂みを見てみれば、もうボロ雑巾みたいに汚くてボロボロのチラーミィがこちらを威嚇していた。少し、体に血がついている。

「手当てしてやりたいんだけど近づくと攻撃されるんだよ」

ポッドはポッドなりに手を尽くしたらしい。もうお手上げというようだった。
チラーミィを見つめるとその子はまだこちらを威嚇している。その姿はとても痛々しい。
あたしはチラーミィから少し離れたところにしゃがんだ。ポッドは何も言わない。

「チラーミィ、おいで」

すっ、とチラーミィを怯えさせないように気を付けて両手を前に出す。

「怪我してるんでしょ?なら手当てしないと」

チラーミィはまだこちらを威嚇している。よっぽどひどい目に遭ったのかもしれない。

「大丈夫、あたしたちは何もしないから」

だから、おいで。
そして少しの間チラーミィと見つめあっているとチラーミィは少しだけあたしに近づいてきた。恐る恐るあたしが何もしないか確認しながら歩み寄ってくる。あたしの手に触れる位置まで来るとちょんちょんと手をつついて、それでもあたしの手が動かないとわかるとキュッ、と手に抱きついてきた。

「ありがとう、チラーミィ」

あたしがチラーミィを抱き上げると少し驚いたようだったが暴れはしなかった。

「…ポッド」
「ポケセン行くぞ」
「うん」

鞄はポッドに持ってもらってあたしたちはポケモンセンターまで走り出した。



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